水道の「再公営化」
いったん民営化(実は「営利化」!)された水道を市町村が買い戻すことは不可能ではないが、非常に高くつく。そもそも「水」は「社会的共通資本」なのだから、利益追求を目的とする私企業に手渡してはいけなかったのです。
※『社会的共通資本としての水』https://amzn.to/2FOB0db
関良基、まさのあつこ、梶原健嗣共著、花伝社、2015年
同書によると、イギリスはサッチャー政権下の1989年、イングランドとウェールズの全域で水道民営化を実施しましたが、25年間で水道料金は実質の値上げ率で50%上昇。水道料金の高騰にもかかわらず、水道施設の老朽化への対応はまともに行われず、ロンドン市の水道事業を担うテムズ・ウォーター社は事業収益をタックス・ヘイヴンにある子会社に逃がしていました。
また、今まさに日本の水道事業に進出しているフランスのヴェオリア社は、1984年パリ市とコンセッション契約を結び、水道事業を手がけることとなりました。水道料金はなんと265%も値上がりしました。結局、パリの水道事業は2010年に再公営化されました。
※英国、「水道代が高すぎてトイレ流せない!」…貧困家庭を直撃https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46436100 2018. 12. 4
※食い物にされる水道民営化・ダム・治水――国富を売り渡す安倍政権の水政策の裏を暴く!岩上安身による関良基氏インタビューhttps://iwj.co.jp/wj/open/archives/375521 (イントロ動画 15分05秒)
※フィリピン・マニラ市は水道料金が4~5倍に跳ね上がり、ボリビア・コチャバンバ市では雨水まで有料化され暴動が起きた。世界の多くの自治体で再公営化が相次いでいるhttps://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/10205 (長周新聞 2018.12.4)
※長周新聞 2018.12.28 映画評 https://www.chosyu-journal.jp/review/10524
『最後の一滴まで ヨーロッパの隠された水戦争』アジア太平洋資料センター制作DVD、日本語字幕・日本語吹替、59分3000円+税
以下、長周新聞 の映画評の要点
ヨーロッパをはじめ世界各国では水道を再公営化する動きが広がっている。2000年~2015年に37カ国235件の水道事業が再公営化された。うち94件は民営化の発祥地・フランスだ。これは今や世界的な潮流になっているという。
…パリに続きドイツ・ベルリン市も2014年、水道を再公営化した。1990年代に新自由主義が台頭し始めたドイツでは、民営化に疑問を持つ者は『過去の人間』『社会主義者だ』と非難され、多くの自治体で水道民営化がおこなわれた。…しかし当時350億ユーロだった市の負債は650億ユーロに増え、民営化で負債が減ることはなかった。しかも3年後には水道料金が30%値上げされた。…2011年2月、住民投票がおこなわれた。98%の住民が『契約内容の公表を求める』に投票。同市は水道サービスの再公営化を実現した。しかし経営権を買い戻すために13億ユーロ(1660億円)もの多大なコストを必要としたのである。…
ギリシャ 水道民営化問う住民投票を実施し、投票者の98%が水道民営化に反対を投じたが、今もトロイカ(欧州委員会、欧州中央銀行、国際通貨基金)からの水道民営化の圧力は止まっていない。
イタリアではベルルスコーニ政権時代に、国民投票で廃止されたはずの水道民営化をひそかに再導入しようとしたが、憲法裁判所がストップをかけることとなった。
アイルランドでは、37あった水道事業体を民営化のため統合して設立された『アイルランド・ウォーター・カンパニー』への反対運動が各地に広がった。…