「属国は何を押しつけられてきたか」又は
「安倍・菅政権は何によって支えられているのか」Ⅱ
♣「属国は何を押しつけられてきたか」Ⅰ で列挙したように、米国からの「要望(=強要)」のリストには際限というものがありません。属国日本の安倍政権は要望に答えて、甲斐甲斐しく法律を変えたり、作ったりしてきました。そして「これだけしっかり親分の言うことを聞いてるんだから、何をしてもお咎めはないはずだ。」とでも考えていたのか、やりたい放題の恥晒しをやってきました。それでも長期政権でいられたことは、米国からの《年次改革要望書》を廃止した鳩山首相の身に起きたことを想起すれば、そこに米国の意図がなかったとは言いきれません。
その宗主国米国では、1986年、レーガン大統領の「新自由主義」政策を皮切りに、貧困・格差・差別・分断が米国民の間に広まりました。米政治を牛耳るグロバル企業には愛国心はないと見えます。ましてや属国丸出しの日本を絞り上げることに躊躇はしません。今までの「要望」は序の口で、これから、農協・漁協などの相互扶助組織が持っている金融・共済の解体、医療制度や国民皆保険制度の破壊、学校教育の民営化が続き、総仕上げは「改憲」です。「金だけじゃなく血も流せ!敵基地攻撃能力を持ち、戦争のできる国になれ!」と要求しています。案の定、トランプ政権のもとで冷遇されていた「ジャパンハンドラー」たちが1月20日の政権交代を待ちきれず、もう「第5次アーミテージ・ナイレポート」を押し付けてきました。其の内容を見れば、日本政府の最近の動きが何に起因するものなのか見当が付きます。自民党政権が続く限りこの不幸な両国関係は修正不能と見えます。
♣さらなる日米軍事連携強化を要求 CSISが「第5次アーミテージ・ナイレポート」で対日政策提言2020.12.12 必読➡https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/19433
「マルチドメイン防衛力(陸海空だけでなく、宇宙・サイバー・電磁波を含む全領域の防衛力)」の構築を進めながら、反撃能力(事実上の敵基地攻撃能力)とミサイル防衛の強化に言及。加えて英語圏5カ国のみで軍事機密情報を共有するネットワーク・「ファイブ・アイズ」に日本を含めるべきだと主張。朝鮮半島やアジア圏で米国が主導してきた軍事的・経済的な覇権が崩れていくなか、日本を米国の先兵として前面に押し出していく方向が色濃くあらわれている。
♣【半田滋の眼 NO.24】敵基地攻撃、装備は着々 20201202
必見➡https://www.youtube.com/watch?v=zkL_4C7LJaU 動画 32分59秒
専守防衛なら不要な、他国を攻撃する時しか使わない武器類が購入され運用されようとしている。静かに進む無定見な軍事大国化。表向き明言しないのは、やっぱり選挙対策なのか。
♣【投稿】水道民営化法は外資に公共財産を売り飛ばす新自由主義的政策
2018.12.23 https://assert.jp/archives/275(以下、要約)
新自由主義を推し進める米戦略国際問題研究所(CSIS)からの指令が背景にある。
安倍二次政権発足直後の2013.04.19、麻生財務大臣はジャパン・ハンドラーの 米戦略国際問題研究所に呼びつけられ、マイケル・グリーンが司会する中、ハレム所長の前で「アベノミクスとは何か~日本経済再生に向けた取組みと将来の課題~」というタイトルで「規制緩和」という名の外資への公共財産の売却を約束させられた。この麻生の説明の裏には『立地競争力の強化に向けて』という竹中平蔵(国家戦略特別区域諮問会議議員・パソナ会長・オリックス社外取締役)の2013.04.17付けのペーパーがある。竹中は「世界一ビジネスのしやすい事業環境に ~交通・都市インフラの改善」という項目において「これまで官業として運営されてきたインフラで、利用料金の伴うもの(空港、有料道路、上下水道、公営地下鉄等)について、民間開放を推進。」「また、インフラの延長上で、官業の民間開放の一環として、公立学校の民間委託(公設民営)。」と書き、それを麻生がなぞったのが実情。
♣菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠麗、「中小企業は消えるしかない」が持論の菅首相ブレーン・アトキンソンも2020.10.19
必読➡https://lite-ra.com/2020/10/post-5677.html 1~3
♣書評『つくられた格差』エマニュエル・サエズ、ガブリエル・ズックマン著2020.11.19 https://www.chosyu-journal.jp/review/19193 (以下、要約)
トランプだけでなく、米国有数の富豪は税金を払っていない。税制民主化の歴史が否定され、100年前に戻ってしまった。なぜ貧困層の税率が高くなったのか? 第一は給与税である。5倍以上に跳ね上がっている。第二は消費税だ。きわめて逆進的な効果を生み出しているという。一方、富裕層の税率が低い最大の理由は、その所得の大半を占める株式保有が非課税になっているからだ。持ち株を売らない限り、彼の個人所得税の実効税率はゼロである。
1930年代から1970年代まで所得税の最高限界税率(最上位の税率区分にかける税率)は80~90%だった。当時、あらゆる税を含めた富裕層の実効税率は50%をこえていた。ところが1986年、共和党のレーガンは所得税の最高限界税率を28%まで一気に引き下げた。このときアル・ゴアやジョー・バイデンなど民主党議員もみな歓喜して賛成票を投じた。「小さな政府」を掲げるレーガンのもと、「社会などというものは存在しない」「税金は合法的な窃盗だ」という新自由主義が大手を振るった。租税回避に政府がお墨付きを与えたことで、租税回避産業が急成長したのである。ちなみに日本政府も、1980年の75%を45%に引き下げている。さらに2018年、トランプが法人税率を35%から21%に引き下げた。米連邦法人税の税率は1995年から2017年までずっと35%で、企業利益は経済成長を上回るペースで拡大していたのに、法人税収は3割も減った。莫大な額の企業利益がタックスヘイブン(租税回避地)に移転されていたからだ。しかもトランプはそれを理由に、法人税収をさらに引き下げた。この時期、フランスも日本もこれに同調した。
現在、世界の多国籍企業の海外利益の4割が、ケイマン諸島やルクセンブルクやシンガポールなどのタックスヘイブンに計上され、わずか5~10%の税金を課されるのみとなっている。それを主におこなっているのはIT企業だ。今ではタックスヘイブンの政府は、税率やさまざまな規制、法的な義務を決める権限を多国籍企業に売り渡しているという。国家主権まで商品化される時代になっている。
著者は、アメリカ社会の再生のために、公的資金で幼少時から大学までの教育、高齢者への生活支援、万人への医療を提供することを提起し、それは富裕層への課税を強化すれば可能だとのべている。すべての富の源泉はあらゆる分野の生産労働だが、グローバル企業が海外でボロもうけをしながら税金の支払を拒否する一方、残された労働者からの課税は強化し、教育も福祉も医療も公的なインフラ整備も削減して源泉を枯らす社会に、未来はないからだ。日本にも共通する問題である。