「ベネズエラの平和と安定のために」2019.02.01セイコウ・イシカワ 駐日ベネズエラ大使が日本記者クラブで講演https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/10999
動画https://www.youtube.com/watch?v=OVLloB04YE0&feature=youtu.be (13:56~41:59 の部分)
(以下抜粋)この講演で、みなさんに事実を正しく捉えてもらい、そのことが私たちベネズエラ人がみずからの手で平和と安定を手にする力になるものと信じている。
「国民がグアイド議員を支持している」という印象が広まっている。しかし、今年の1月7日から11日におこなわれた世論調査によると、回答者のうち81%もの人人がグアイド議員のことを認知していなかった。そもそもグアイド議員が国会議長になったというのも、野党の主要4党による合意に基づく輪番でその座に就いたに過ぎない。さらにグアイド議員が属する「大衆意志党」はその野党のなかでも最も少数勢力だ。しかも党のなかでさえグアイド議員はトップではなく、ナンバー3でしかない。そして、他の野党代表らもグアイド議員の暫定大統領就任を拒否している。
トランプ大統領は2018年9月、平和な機関であるべき国連の場で軍事介入を示唆してベネズエラを恫喝した。その数カ月後にグアイド議員は暫定大統領を宣言するよう圧力を受けている。このように政治的危機を増大させたうえで、ボルトン大統領補佐官は1月28日に「米兵5000人をコロンビアへ送る」とする驚愕のメモを出した。コロンビアはベネズエラと2500㌔も国境を共有し、しかも国内に米軍基地が9つある。
2002年、チャベス大統領時代に起きたクーデターでも、米国の後押しを受けた石油企業の幹部が大統領を名乗るという、今とまったく同じ事態が起きた。さらにこうした事案にCIAが関与していたことを示す証拠も幅広く見つかっている。このときは、勇敢なベネズエラ国民が街頭に出て、民主主義の復活を要求し、彼ら自身の大統領――チャベス氏の大統領復活を勝ちとった。つまり、今回のグアイド氏による暫定大統領の就任宣言というのは、ベネズエラにおける2回目のクーデターにあたる。
ベネズエラ政府は、そこでの事前合意にあった内容を一つ一つ実行していくことを決めた。その合意には昨年5月20日に大統領選挙をおこなうというとり決めもあった。実際、選挙がおこなわれ、国内20の政党が参加し、900万人もの有権者が投票した。その結果、67%の得票を得てニコラス・マドゥロ大統領が再選されたという経緯がある。さらに、この選挙には150人もの国際立会人団が参加しており、立会人団は「今回の選挙で変わったものはなかった」とのべ、その正当性を裏付けている。
記者との質疑応答
大使…人権について指摘しておきたいのは、チャベス前大統領が就任したさいにベネズエラは新憲法を制定している。憲法では人権を拡大し、それを保障するという内容を新たに定めた。現に、国連の人権委員会がおこなう審査でベネズエラは常に合格に達している。人権を政治的道具として使うことはやめなければならない。
大使…ベネズエラ国内の野党派も含めたすべてのセクターが同意していることは、経済制裁は停止されなくてはならず、この違法で犯罪的な制裁をやめることによって問題に対応することができるということだ。とくに金融取引を停止され、貿易を停止され、ベネズエラが保有する金で返済能力を高めることすら禁止されている状態で、いかなる経済再建が可能なのか考えてもらいたい。確かに制裁が経済危機の唯一の原因ではないが、主要な原因であることは疑いない。 近近、大使館のホームページ(http://venezuela.or.jp/)でベネズエラに科されている制裁の一覧を掲載する。それを見れば、この制裁がいかに影響を与えているか理解できると思う。
大使…さらにベネズエラの選挙制度は世界で最も優れたものという発言もなされている。ベネズエラでは電子投票制度を採用しているが、選挙前、選挙中、選挙後を含めたすべての過程に16もの会計検査ステップがある。この16の会計検査ステップには、選挙に参加するすべての政党が確認に立ち会わなければならないことになっている。ラテンアメリカ選挙監視機構の代表は「5月の大統領選ではまったく何のイレギュラーな事故もおこらなかった。この大統領選が不正だという指摘は、政治的理由によるものだ」と発言している。…
大使…ベネズエラにいたことがあるすべての人が知っていることだが、ベネズエラには完全に報道の自由がある。それを示す事実として、政権に批判的なニュースは非常にたくさんあり、これは政権に好意的なニュースよりも圧倒的多数に及ぶ。これは報道の自由の幅をあらわしているものではないか。私たちも報道の自由を尊重してきたが、海外記者の拘束はベネズエラの基本的な規則によるものだ。免許や許可証がなければ外国から国内に入って仕事ができないのは各国共通のルールであり、拘束された記者たちは報道ビザを持っていなかったようだ。大使館のホームページにはベネズエラ憲法の日本語訳を載せている。そこでは、「国の主権は国民のみにある」と明確にしている。
欧州とくにEUがおこなったことは、ベネズエラで人人が選んだ合法的な大統領を認めないということだ。しかも、憲法に規定のない「暫定大統領」というものをベネズエラに押しつけようとしている。しかも、選挙の実施日まで指定してきているという現状だ。建設的な役割を果たさなければならない機関がまったく逆のことをしている。世界にとって非常に危険なことだ。
大使…ベネズエラとベネズエラ政府がおこなってきた社会政策は、現在の経済状態にあっても予算を割いて実施している。最も象徴的な例は、住宅計画(ミシオン・ビビエンダ)だ。これまでに240万戸の住宅を貧困層の人人に供給している。どれだけの予算と労力が割かれたかがおわかりかと思う。つい1週間前の政府発表では、キューバから数千人の医師がベネズエラに到着し、医療・福祉計画に則って人人に医療を提供することになっている。ベネズエラの社会政策は止まることなく前進し、貧しい人たちへの支援を続けていく意志をもっている。
「エル・システマ」は、公的融資によって社会的運動を実施するという理念に基づいた音楽教育プログラムで、創設者のホセ・アントニオ・アブレオ博士は残念ながら昨年3月に亡くなった。博士の功績を讃えるセレモニーで、これまで100万人の子どもたちがこのプログラムに参加してきたことが発表された。エル・システマは音楽教育を通じて、さまざまな恵まれない環境にいる子どもたちの成長・発展を促していくプログラムであり、無料で提供されている。世界のどこにこれほど厳しい経済状況にありながら、これだけの規模で計画を続けている国があるだろうか。世界のみなさんに可能性があればこれを続けていく努力に加わっていただきたい。来年、ベネズエラの音楽家だけでなく、全国の子どもたちが幅広く参加するイベントが開かれることを間もなくお知らせできるだろう。そして、それは日本で開催される予定だ。…
大使…つまり「民主主義と自由」というものは、他国をひざまずかせるために使うことができる非常に有力な武器になるということだ。このなかでメディアの果たす役割は非常に大きい。…象徴的なのは2002年のチャベス前大統領に対するクーデターだ。これはメディアによって計画され、メディア自身がおこなった史上初のクーデターだった。ぜひ見てほしいドキュメンタリーがある。スペイン語で『LA REVOLUCIÓN NO SERÁ TELEVISADA(伝えられない革命)*』(邦題『チャベス政権・クーデターの裏側』)というドキュメンタリーだが、これはクーデターがどのように実行されたかを内部から刻一刻と伝えている。
*必見➡https://www.youtube.com/playlist?list=PLOvWDkn94tQUrZBBQKJcSqMgXplAImybW