戦争がやって来る 「5月1日付で、ジョン・ピルジャーが、硬骨のジャーナリストとして過ごして来た長い過去を回想しながら、迫り来る戦争に対して断固として声を上げ、我々にもはっきりと声を上げることを求めました。」…藤永茂氏
(「戦争がやって来る」の藤永氏による全訳はここクリック➡2023.05.05藤永茂 以下は、同じ英語原文からの訳文を「マスコミに載らない海外記事」より転載させて頂いたものです。 ノーベル平和賞受賞者オバマ元米大統領が「世界平和」に貢献したと思っている人には必読の記事。 抜粋と強調はセワヤキ)
♣来たるべき戦争:今こそ声を上げよう。 ジョン・ピルジャー 2023.05.02 http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2023/05/post-268f4a.html
(…)オーストラリアへの脅威はない。皆無だ。遠く離れた「幸運な」国には敵がおらず、とりわけ最大の貿易相手国、中国は敵ではない。(…)かつて眠ったような社会民主主義国だったオーストラリアは、今や秘密主義的で権威主義的な権力を擁護し、知る権利を妨げる新しい法律網を制定した。内部告発者は無法者で秘密裏に裁判にかけられる。
(…)これら指導者中、最も悪名が高いのはニュルンベルク基準では明白な犯罪人トニー・ブレアで、自由で金持ちだ。読者に知る権利があることを証明するため敢えてジャーナリスト活動をしたジュリアン・アサンジは、投獄されて10年を越える。
ヨーロッパにおけるファシズム台頭は議論の余地がない。または「ネオナチ」または、皆様のお好みで「過激民族主義」。現代ヨーロッパのファシスト蜂の巣ウクライナは、1万人のウクライナ系ユダヤ人を虐殺したヒトラーの「ユダヤ人政策」を称賛した情熱的反ユダヤ主義者で大量殺戮者ステパン・バンデラ・カルトの再出現を見ている。「我々はヒトラーの足元にお前たちの首を置く」とバンデラ主義者パンフレットがウクライナ・ユダヤ人に宣言した。
今、バンデラは西ウクライナで英雄崇拝されており、彼と仲間のファシストの何十もの彫像がEUとアメリカに資金提供され、ナチスからウクライナを解放したロシアの文化的偉人や他の人々の像に取って代わった。
2014年の「親モスクワ」と非難された選挙で選ばれた大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィチに対する、アメリカが資金提供するクーデターで、ネオナチは重要な役割を演じた。クーデター政権には著名な「過激民族主義者」、つまり事実上のナチスが含まれていた。当初、これはBBCとヨーロッパとアメリカのメディアが詳細に報告した。2019年、タイム誌はウクライナで活動する「白人至上主義民兵」を特集した。NBCニュースは「ウクライナのナチス問題は現実だ」と報じた。オデーサの労働組合会館における人々の焼き殺しは撮影され文書化された。
ドイツSSで悪名高い記章「ヴォルフスアンゲル」をつけたアゾフ連隊率いるウクライナ軍は、ロシア語を話す東部ドンバス地域に侵入した。国連によると東部では14,000人が殺された。七年後、アンゲラ・メルケルが告白したようにミンスク和平合意は欧米に破壊され、赤軍が侵攻した。
こういう形の状況説明は欧米では報じられない。それを口にすることさえ(私のような)著者はロシア侵略を非難したかどうかにかかわらず「プーチン擁護者」だと虐待・鎮圧される。「NATOが武装した国境地帯、ヒトラーが侵略したのと同じ国境地帯(である)ウクライナはモスクワに対する極端な挑発だ」、という考え方は忌み嫌われる。
ドンバスを訪問したジャーナリストは自国で沈黙させられたり追い詰められたりした。ドイツ人ジャーナリストのパトリック・バーブは職を失い、若いドイツ人フリーランス記者アリナ・リップは銀行口座を差し押さえられた。(…)
2003年ワシントンで、私は高く評価されている調査ジャーナリスト、チャールズ・ルイスとのインタビューを撮影した。我々は数ヶ月前のイラク侵攻について話し合った。「もし世界で憲法上最も自由なメディアが粗雑なプロパガンダだと判明したものを広めるのでなく、ジョージ・W・ブッシュやドナルド・ラムズフェルドに真剣に異議を唱え、連中の主張を調査したらどうなったでしょう?」 と私は彼に尋ねた。彼は答えた。「我々ジャーナリストが仕事をしていればイラク戦争はしなかった可能性が非常に高い。」
(…) 「私は全身全霊でアメリカ例外主義を信じている」とオバマは言い、最初の冷戦以来、決して他の大統領がしなかった「特殊作戦」として知られる大統領のお気に入りの娯楽である爆撃、暗殺部隊を拡大した。
外交問題評議会の調査によると、2016年にオバマは26,171発の爆弾を投下した。それは爆弾一日72発だ。彼はアフガニスタン、リビア、イエメン、ソマリア、シリア、イラク、パキスタンで最も貧しい人々と有色人種を爆撃した。(…)
2011年、リビアのムアンマル・カダフィ大統領が自国民に対する「大量虐殺」を計画しているとオバマはメディアに語った。「あと一日待てば、(ノースカロライナ州)シャーロットほどの規模の都市ベンガジが地域全体響き渡り、世界の良心を汚す虐殺に見舞われるはずだと知っている」と彼は言った。
これはウソだった。唯一の「脅威」は、リビア政府軍によって起こされるおそれがある、狂信的イスラム主義者の来るべき敗北だった。
独立した汎アフリカ主義、アフリカ銀行、アフリカ通貨の復活という、全てがリビアの石油に資金提供される彼の計画のおかげで、カダフィはリビアが二番目に近代的な国家であった大陸での西側植民地主義の敵として描き出された。
カダフィの「脅威」と彼の近代国家を破壊するのが狙いだった。アメリカ、イギリス、フランスの支援を受けて、NATOはリビアに対し9,700回の出撃を開始した。三度目はインフラと民間標的を狙っていたと国連は報告した。ウラン弾頭が使用された。ミスラタとシルテは絨毯爆撃された。赤十字は集団墓地を特定し、ユニセフは「(殺された子供の)ほとんどが十歳未満だった」と報告した。
オバマの国務長官ヒラリー・クリントンが、カダフィが反乱軍に捕らえられ肛門にナイフを突っ込まれたと聞かされた際、彼女は笑ってカメラに向かって言った。「我々は来た、我々は見た、彼は死んだ!」(訳注:Veni, vidi, vici 「来た、見た、勝った」というカエサル発言の卑劣なもじり)
2016年9月14日、ロンドンの庶民院外交委員会は、ベンガジ虐殺の話を含む「一連のウソ」と表現したリビアに対するNATO攻撃に関する一年にわたる調査結論を報告した。
NATO爆撃はリビアを人道的災害に陥れ何千人もの人々を殺し、更に数十万人を避難させ、リビアをアフリカで最高生活水準の国から、戦争で荒廃した破綻国家に変えた。
オバマ政権下で、アメリカは秘密「特殊部隊」作戦を138カ国、つまり世界人口の70パーセントに拡大した。最初のアフリカ系アメリカ人大統領はアフリカへの本格的侵略を開始した。
19世紀のアフリカ分割を彷彿とさせるアメリカ・アフリカ軍(Africom)は、以来アメリカの賄賂と兵器に熱心な協力的なアフリカ政権の中に懇願者ネットワークを構築してきた。アフリコムの「兵士から兵士へ」教義は将軍から准尉まで、あらゆるレベルの指揮官にアメリカ将校を組み込んでいる。欠けているのは探検帽だけだ。
それはまるで、パトリス・ルムンバからネルソン・マンデラに至るまでのアフリカの誇り高い解放の歴史が、新しい白人ご主人の黒人植民地エリートによって忘却の彼方に消え去られるかのようだ。このエリート連中の「歴史的使命」は、ものを知るフランツ・ファノンが警告した通り「それと分からぬよう偽装されているが、すさまじい資本主義」の推進だ。
NATOがリビアを侵略した2011年、オバマは「アジア基軸」として知られるようになったものを発表した。国防長官の言葉を借りればアメリカ海軍のほぼ三分の一が「中国の脅威に立ち向かう」ためアジア太平洋に移される。
中国の脅威はなかった。アメリカからの中国に対する脅威があった。約400の米軍基地が中国の産業中心地の縁に沿って弧を描き、国防総省当局は「首つり縄」と肯定的に表現している。
同時にオバマはロシアを狙うミサイルを東ヨーロッパに配備した。ノーベル平和賞で列福された受賞者は核弾頭支出を冷戦以来どのアメリカ政権より高水準に増しながら、2009年プラハ中心での感動的演説で「核兵器の世界をなくすのを支援する」と誓った。
オバマと彼の政権は、2014年にウクライナ政府に対するクーデターを監督するためヴィクトリア・ヌーラントを派遣したことが、ロシアの反応を引き起こし戦争につながることを十分に知っていた。そしてそうなった。(…)
戦争は正気の人々には相応しくない。そして私は「我が国の」プロパガンダについて学んだ。
あの戦争中、「ベトナムの勝利は共産主義病をアジアの他地域に広め、北の黄禍の到来を可能にする」とプロパガンダは言っていた。諸国は「ドミノ」のように倒れるはずだと。
ホーチミンのベトナムは勝利したが、上記のどれも起きなかった。その代わり、彼らが支払った代償にもかかわらず、ベトナム文明は驚くべきことに開花した。300万人が亡くなった。そして傷ついた人々、奇形になった人々、麻薬中毒になった人々、毒をもられた人々、亡くなった人々。
今のプロパガンダ屋が中国との戦争を実現した場合、これは今後起きることのほんの一部になるだろう。今こそ声を上げて頂きたい。