「種子を支配するものが世界を制する」
―農業は産業ではなく食糧であり安全保障である― 日刊IWJ 2017.11.17 参考
2018年3月に施行されることになっている「種子法廃止」に、山田正彦元農水大臣が「日本の種子(たね)を守る会」の顧問として、強い警告を鳴らしています。
※種子法廃止で「日本は遺伝子組換えの氾濫国になる」!
米政府と多国籍企業の要求を丸のみする「規制改革推進会議」と安倍政権
岩上安身による山田正彦元農水大臣インタビュー!2017.11.16
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/405420 (ハイライト動画 13分28秒)
種子法は1952年、日本の主権回復とほぼ同時に成立された法律で、この法律こそが食糧難にあえぐ戦後日本の食料安全保障を支えてきました。米、麦、大豆といった「基礎食料」について、その良質な種子の安定的な生産と普及は「国が果たすべき役割だ」と義務づけ、品質向上のための農業試験場の運営など、国が責任をもって予算を配分してきました。その結果、長い期間をかけてコシヒカリのような美味しいお米が全国で誕生し、今日の食卓に並んでいます。しかし、TPP協定と日米2国間合意に伴い設置された「規制改革推進会議農業ワークグループ」が「種子法の廃止案」を取りまとめ、状況は急展開を迎えます。その規定どおり、政府与党は種子法廃止法案を2017年4月に可決・成立させ、種子法は2018年3月いっぱいでの廃止が決定しています。
TPP日米2国間合意文書
日本政府は(略)外国投資家その他利害関係者からの意見および提言を求める。
意見及び提言は(略)定期的に規制改革会議に付託する。
日本国政府は規制改革会議の提言に従って必要な措置を取る。
規制改革推進会議の役割
「規制改革推進会議の提言に政府が従う」という文言から、モンサントのような多国籍企業に日本の農地を売り渡すための「多国籍企業の要求受け入れ窓口」になることが「規制改革推進会議」の役割ではないかと推測される。
(IWJは、日米地位協定をどう運用するかを協議する「日米合同委員会」の存在を問題視してきましたが、岩上さんは山田氏インタビューの中で、規制改革推進会議について、「経済版・日米合同委員会」だと指摘しています。)
種子法の廃止によって、さまざまな悪影響が懸念されます。中でもF1種子(ハイブリッド種=異なる性質の種を人工的にまぜ合わせてつくった雑種の一代目)や遺伝子組換え作物が広く出回ることは間違いありません。
F1種の危険性
日本で出回っている野菜のほとんどがF1種になっている。(F1種は無精子の種で、これを食べた蜜蜂の雄が不妊症になった。)米でもすでに、日本モンサントの米「とねのめぐみ」や「つくばSD」などのF1種が出回っている。
モンサントと農家の交わした契約では、化学肥料も農薬もモンサント指定のものを使わなければならず、できたお米も、セブンイレブンや吉野家など指定したところに全量売らなければならない。
「つくばSD」の契約者などは、もし収量が事前の予想よりも落ちた場合、悪天候などの影響を生産者側が立証しなければ、その不足分を賠償しなければいけないという契約になっている。
また、F1種はノーマルな種と違い、1度きりしか収穫できず、毎年モンサントなどの種子会社から種を購入しなければならない。
種子法廃止の結果…
種子法の廃止によって、優良種子の提供が不安定になることや種子の価格の不安定化、廃業する農家の増加、輸入米の増加、そして企業による遺伝子組換え(GM)種子の販売加速など、さまざまな悪影響が懸念される。農家は、農薬から肥料まで指定され、収穫量まで規定され、翌年以降も毎年種を買い続けなければならなくなる。これでは、農家が種子会社の支配化に置かれたも同然。
また GM食物は、適合する除草剤とセットで種子が販売される傾向にあり、一度GM種子が使用されると、元の栽培法には戻れないとも言われている。こうした販売方法が普及することで、生産者である農家の選択肢が狭まり、日本の農業は多国籍種子企業に支配されてゆくことになるだろう。
そして、現時点で37%しかない日本の食料自給率は14%にまで下がると予測されている。もしこの状態で日米間に亀裂でもできたりすれば、自力で種から作物を育てる力を失った日本が国民の生命を守れなくなる。安倍政権はあれだけ「安全保障」と声高に叫びながら、生命を保障する「食料安全保障」を多国籍企業に売り渡すことになる!、そうなれば日本の食料安全保障は崩壊してしまいかねない。
一方、EUでは農家の収入の8割が所得補償されており、「農業は産業ではなく食糧であり、安全保障である」という認識が共有されている。憲法に「食料安全保障」の規定を盛り込んだスイスの国民投票の事例もある。
IWJでは、この食料主権を放り捨て、多国籍企業の言いなりになろうとする安倍政権の愚策を批判すべく、種子法廃止に関する特集記事の作成を急ピッチで進めています。このままでは、ますます食の安全が脅かされ、日本の農地が多国籍企業の支配下に置かれてしまうでしょう。どうかIWJの特集ページを拡散し、この問題を広めてください。※会員登録はこちらからhttps://iwj.co.jp/ec/entry/kiyaku.php
必読書!
※「自殺する種子」 安田節子著(平凡社新書)¥778
※「食の戦争――米国の罠に落ちる日本」 鈴木 宣弘著 (文芸新書)¥710