日本発PCR検査手法・検査機が海外で普及?!
♣滋賀県草津市に本社を置くバイオテクノロジー関連の研究開発型企業、「タカラバイオ」が、2時間弱で最大5000件超のPCR検査を行うことが可能な手法を開発しました。現在世界で主流となっているスイス製薬大手ロシュの手法に比べて、検査スピードが飛躍的(14倍以上…日経)に向上することが予想されます。
「タカラバイオ」が開発した検査機器は、米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可(EUA)を申請中で、近く承認を得られる見通しとなっています。新たな検査法は「タカラバイオ」の米子会社、「タカラバイオUSA」と医療関連企業の「バイオシンタグマ」が共同開発しました。一度に最大5184件の検査が可能で、2時間で結果が分かるといいます。
「タカラバイオ」が米国で新たな検査法を申請した背景には、有効性などが認められれば、未承認のものでも緊急に承認される制度であるEUA(緊急使用許可)が米国にあったからだとされています。日本に比べて米国の方が早期に市場への投入が可能であることや、この手法の権利をバイオシンタグマが保有していることから、当面は米国市場での浸透に専念し、日本での展開は予定していないといいます。
世界各国が積極的な検査で感染拡大の封じ込めをねらう海外諸国に対して、日本はいまだ政府や与党を中心に検査抑制論が支配的な状態です。政府は一刻も早く、非科学的なロジックから抜け出し、国民の生活を守るために検査の拡充を急ぐべきです。10兆円もの予備費は、いつできるかわからないワクチンよりも、まず先に、こうした新しいPCR検査法を積極的に採用して、日本全国に普及させることに使うべきです。(日刊IWJ 2020.08.30 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/date/2020/08/30)
♣出来るPCR検査なぜやらぬ? 海外で大活躍する国内メーカーの検査機2020.08.18 https://www.chosyu-journal.jp/shakai/18301
(…)フランスでは「第二波」阻止に向け、徹底的なPCR検査を展開している。とにかく「早期発見」を目的とし、検査を受けに来る人を待つだけではなく、各家庭に検査に出向く「ローラー検査作戦」や、献血のように各地を巡回するPCR検査隊もできている。だれでも無料で検査を受けることができ、無症状でも受けられる。現在は週37万件=1日5万件以上のペースで検査をおこなっている。また、7月11日からは全国の薬局で抗体検査ができるようにした。1回15ユーロ(約1800円)程度だ。
フランス政府は6月に週70万件の検査数を目標とすると発表したが、PCR検査急増策に貢献しているのは、日本の技術だ。それまでは主に大きな病院でおこなってきた検査を、小規模な民間の施設でもできるようにし、合計4840カ所に増やした。
そこへの導入が進んでいるのが検査の工程をすべて全自動でおこなう検査機器で、開発したのは千葉県松戸市の精密機器メーカー「プレシジョン・システム・サイエンス(PSS)社」と仏エリテック社の共同開発だ。これまでの検査方法に比べ時間を3分の1に短縮できる。(…)
フランスでの迅速なウイルスの検出に非常に貢献をしたとしてPSS社は4月26日、駐日フランス大使から感謝状を贈られている。
PSS社の全自動システムは2015年から販売されており、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカなどヨーロッパ圏を中心に五十数カ国の医療現場で5008台以上が使用されている。もともとは肝臓移植の感染リスク検査などに使用されていたが、新型コロナウイルス感染拡大で活躍している。
(…)ところが日本ではこれまで未承認で、1台も使用されていなかった。6月にやっと保険適用になり、8月3日から販売開始になった。PCR検査機器を販売するにはヨーロッパは販売手続きが簡単だが、日本は厚労省の認可申請手続きが非常に煩雑で、通常では認可まで1年以上かかることがある。
もともと日本ではPCR検査のマーケットが小さく、手続きも難しく煩雑だったため、PSS社は海外での事業を優先した。日本で保険適用の認可を受けるためには、PCR検査全体(試薬から機械まで)をセットで申請しなければならず、PSS社は機械の会社であるため申請までに時間がかかったという事情もある。
(…) アベノマスク配布にかけた466億円を回せば、安いもので約6000台、高いものでも2000台は導入できるとの指摘もある。ほぼ全国の公立病院や主要大学病院、保健所などに配置できる数だ。検査数を一気に拡大できることは確実で、しかも検査時間も大幅に短縮できるし、人員も少なく、検査技師が感染するリスクも軽減する。日本のメーカーが国内で製造し、世界各国で活躍している全自動PCR検査機器の導入に消極的なのが厚労省だ。
人口1000人当りのPCR検査数(7月26日時点)はアメリカは日本の約27倍、イギリスは約20倍、イタリアは約8倍、韓国は約2倍となっている。 ちなみに中国は5日、1日のPCR検査能力を7月末までに最大484万件に拡大したと発表した。3月初めの約120万件から5カ月で4倍に増強した。日本はいぜんとして1日最大3万5000件程度にとどまっている。
(…)厚労省は1月28日に新型コロナウイルスを感染症法の「二類感染症並み」に指定した。感染症法では、PCR検査を含む行政検査を、厚労省―国立感染症研究所(感染研)―保健所・地方衛生研究所というラインが独占することを規定している。 その結果、PCR検査は保健所と地衛研が独占し、検査対象は海外からの帰国者と濃厚接触者に限定された。
(…)保健所の処理能力、検査体制、医療資源などをこえる数の感染者が発生してきた。これは、保健所を中心とする検査・入院・隔離を基本とする、現行の感染症法が想定する事態をはるかにこえている。保健所の数自体も1994年に847あったものが現在では469と半減している。保健所に集中する仕事量が膨大で人員的にもパンクしていることは当初から問題になっていたにもかかわらず、厚労省はほぼ従前とかわらない体制を維持しており、なんの改革もしていない。
(…)ところが、医療機関でも保険によるPCR検査は感染研の積極的疫学調査の業務委託という形になっている。都道府県と医療機関の契約が必要になり、1カ月もの期間がかかる。 アメリカなどのように医師と患者が必要と判断すれば簡単に検査できる体制ではない。日本医師会はここがPCR検査のネックになっていると問題にし、医師が必要と認めれば委託契約を結ばなくても検査ができるような体制に変革するべきだと提言している。
(…)また、世界でも例を見ない院内感染が問題になっているが、医師や看護師などがPCR検査を受けようとすると、感染症法上規定がないため自己負担となる。
(…)新型コロナはこれまで感染症法の対象になっていたコレラなどとは違った特徴をもっており、現行の感染症法で対応することはできないことが明らかになっている。厚労省は現実を感染症法に押し込めるのではなく、新型コロナ感染拡大の現実にあうように感染症法を改定し、新しい制度をもうけることが必要になっている。