本の紹介―「日本会議の研究」菅野 完 著 (扶桑社新書)―
「国会議員一覧リストhttp://democracy.minibird.jp/ 」によれば、 2017.7.7現在、衆議院議員 474名のうち、▶ 日本会議 (国会議員懇談会)所属220名(46%) ▶ 神道政治連盟所属225名(47%)となっています。 また、この「リスト」を参考に分析しているblog http://1000nichi.blog73.fc2.com/blog-entry-9890.html(2017.4.11)によれば、なんと、安倍内閣の閣僚の84%が「日本会議」に、95%が「神道政治連盟」に所属だそうです。異様なのは、大手メディアが「日本会議」について、まったく報じる気配がないことです。そのことに対する憤りが「日本会議の研究」のモチベーションになったと著者である菅野氏は書いています。 菅野氏は本書の問題意識を「安倍政権の反動ぶりも、路上で巻き起こるヘイトの嵐も、『社会全体の右傾化』によってもたらされたものではなく、実は、ごくごく一握りの一部の人々が長年にわたって続けてきた『市民運動』の結実ではないのか?」ととらえています。
「日本会議」の動員力を担う「実働部隊」は 宗教団体(宗教右翼)!
参考∶東京新聞2014.7.31の特集記事「日本最大の右翼派組織 日本会議を検証」
「日本会議」の役員の3分の1以上が宗教関係者。 地方議会や行政に請願や署名などを働きかける運動の最前線を担っているのは、宗教団体が動員した運動員たちだ。ただし、宗教団体の運動だということを知らされずに動員されている学生もいる。「日本会議」の背後に谷口雅春の「成長の家」原理主義があること知る人は少ない。
「神社本庁」「靖国神社」「伊勢神宮」「明治神宮」「熱田神宮」「岩津天満宮」「天台宗」「延暦寺」「念法真教」「仏教護念会教団」「霊友会」「IIC」「国柱会」「新生儒教教団」「キリストの聖書塾」「崇教真光」「黒住教」「大和教団」「「オイスカインターナショナル」「解脱会」「倫理研究所」「モラロジー研究会」などが宗派や信仰対象や伝統の違いを超えて、極めて積極的に運動に参画。(以下、セはセワヤキにより挿入)
「日本会議」が目指すもの
(1)「皇室中心」(2)改憲(3)靖国神社参拝(4)愛国教育(5)自衛隊海外派遣
これまでの「日本会議」の運動(最高裁との人事面でのつながりに留意必要!)
元号法制定運動 (セ1979制定https://kotobank.jp/word/元号法-491844)
国旗国歌法制定 (セ1999制定https://kotobank.jp/word/国旗・国歌法-176086)
皇室典範改正反対運動 (セ2005女系天皇を認める皇室典範改正反対運動)
教育基本法改正 (セ2006全部改正https://ja.wikipedia.org/wiki/教育基本法)
歴史教科書選択運動(セhttp://japanese.donga.com/List/3/all/27/413681/1)
男女共同参画反対運動 (セhttps://www.nipponkaigi.org/activity/archives/1772)
夫婦別姓阻止運動 (➡「家族条項」の加憲をめざす)
改憲運動/反憲法運動 (「緊急事態条項」「家族条項」の追加をまず目指す)
「日本会議の運動戦略」元号法制定運動を成功させた戦略の基本パターンを踏襲
椛島有三が当時提示した戦略の基本パターン∶「国会や政府をゆり動かす」ため、「各地に自分たちの問題として取り上げるグループを作り」「県議会や町村議会などに法制化を求める議決をしてもらい」「この力をもって政府・国会に法制化実現をせまる」
*前記の「日本会議」の目指すもの(1)~(5)につき、複数の別働団体を設立する。
*設立された別働団体の各々がそのまた地方組織を設立する。
*それら地方組織が地方議員を支え、各自治体の議会での影響力を行使する。
*それぞれの別働団体が個別に、署名活動、街頭演説、勉強会やシンポジウム、決起集会の開催など、さまざまなチャンネルで、自分たちの主張を繰り返す。
*「活発な請願運動」を武器として地方議員に働きかけ地方議会を通して国会に提出。
*高度な事務処理能力で、請願書や意見書を地方議会から国にあげさせる。
別働団体の例∶ 各種の超党派議員連盟 「日本会議 国会議員懇談会」「神道議連・神道政治連盟国会議員懇談会」「靖国議連・みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」「教科書議連・日本の前途と歴史教育を考える議員の会」「新しい歴史教科書をつくる会」「新憲法制定議員同盟」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」「英霊にこたえる会」「~区から日本をよくする会」など無数
◇例えば「男女共同参画バッシング」では、各地の教育現場で性教育実施への反対運動を展開し、地方議会に請願や陳情を行う。この系列の地方議員たちはこれらの反対運動を背景に、議会での質問攻勢に出ることで、行政や学校現場への介入を強める。同様な運動手法で「歴史教科書選択運動」でも成功している。これらの運動手法は左派が従来とってきたものに似ているが、それとの違いはその規模の大きさと執拗さにある。
「日本会議」の最終目標は 「明治憲法」の復活!?
「改憲」のための別働団体 「美しい日本の憲法をつくる国民の会=1000万人ネットワーク」「21世紀の日本と憲法有識者懇談会=民間憲法臨調」「新憲法研究会」「日本政策研究センター」「憲法調査推進議員連盟」「新憲法制定議員同盟」など。
「美しい日本の憲法をつくる国民の会」設立(2014.10.1)の設立総会で「安倍内閣は、改憲の最終目的のために我々みんなの力を得て成立させたもの」という来賓挨拶があった。
「憲法改正の早期実現を求める地方議会決議」を促す運動
「日本会議」は、その地方支部や、各種別働団体、そのまた地方支部、地方協力団体などを通じて地方議会の議員に働きかけ、次々と請願書や意見書を採択させている。「美しい日本の憲法をつくる会」は2015年度運動方針として「1000万人賛同者獲得運動の推進」「地方議会での意見書採択運動の推進」の二つを採択。 2015.1.10までに「憲法改正の早期実現を求める地方議会決議」をした地方議会は、25府県議会/36市区町村にものぼる。
請願から決議まで ( 例 港区)
議会事務局に提出➡議会内で各会派に回される➡賛同する議員は請願書に署名する➡一人署名する議員があれば、内容に従って各委員会に付託され審議される➡議会の意思を意見としてまとめ、議員提案で本会議にはかり、議長名で国会や関係省庁に提出できるが、決議は法的根拠がない(セhttps://kotobank.jp/word/議会の決議-895799)
(セ http://kimbara.hatenablog.com/entry/2014/09/27/234435地方議会発の「国会に憲法改正の早期実現を求める意見書」は憲法尊重擁護義務に違反! 憲法96条2項の規定から明らかなとおり、条項の追加・削除・修正を発議する権限は、現行憲法の基本原理と矛盾せぬ範囲内において、認められているに過ぎません。)
「日本会議」の歴史「日本会議」は1997年に結成された民間の保守団体で、自称、「全国に草の根ネットワークを持つ国民運動団体」。しかしその主張内容は、従来の「保守」「右翼」とは異質。 その源は1966年に結成された「生長の家学生会全国総連合」にまでたどれる。この組織が1969年に他の民俗派学生セクトと団結して、左翼学生運動に対抗する「全国学生自治連絡協議会」(全国学協)を結成。そのOB組織として1970年に「日本青年協議会」が結成される。その大半は「生長の家」の信者だ。新憲法を呪詛し続けた「生長の家」創始者・谷口雅春の愛弟子を自称する彼等は、1974年「反憲法学生委員会全国連合」を結成。「改憲」ではなく、現行憲法を徹底的に否定する「反憲」をその綱領とする。1977年に「日本青年協議会」は、当時、元号法制定運動を目指していた「日本を守る会」(「生長の家」の信者である村上正邦がリーダー)の事務局に入る。左翼学生運動との対峙で成果をあげた彼等の運動手法で、二年後には早くも元号法を制定させるのに成功。1997年に、それまで「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」をリードしてきた村上正邦が、両組織を合併して「日本会議」を創設するに至った。「日本青年協議会」は、現在も「日本会議」の事務局として運動の立案、リソース配分、進捗管理などの重要な機能を果たしているが、それはメディアなどで表ざたにはされず、密かに行われている。
「生長の家」谷口雅春により1930年に創設されたもので、「天皇国日本」を掲げ右派的な教義を説く宗教団体。創始者・谷口雅春は強烈な反共意識を持ち、「愛国政治家」の異名を持つ。新憲法を呪詛し続け、公職追放が解けた直後より「明治憲法復活」「占領体制打破」などをスローガンに掲げる右派社会運動を展開。教団内部資料「神国への構想」(1973?)には「反憲的解釈改憲」が必要であることを信者に解説した記事がある。1974年「反憲法学生委員会全国連合」結成。しかし、1983年10月に「生長の家」教団が政治運動脱退宣言をする。以降、教団に不満な信者により「生長の家原理主義者団体」(菅野氏 命名)がいくつか創設された。その最大組織が「谷口雅春先生を学ぶ会」だ。(注意!現在の「生長の家」は「エコロジー左翼」的路線をとり、「日本会議」との人的交流は一切ない)
「生長の家原理主義運動」の推進力である3セクターを率いる人々
「日本青年協議会」「日本会議」/「日本政策研究センター」/「谷口雅春先生を学ぶ会」
椛島有三(かばしま・ゆうぞう)∶ 「生長の家」学生信徒グループを率いて、長崎大学学園正常化闘争で左翼学生運動に勝利し、民俗派学生運動のヒーローとなる。社会人になって1970年に「日本青年協議会」を結成。1977年に当時、元号法制定運動を目指していた「日本を守る会」の事務局に入り、「日本青年協議会書記長」として事務を取り仕切り、二年後に元号法制定運動を成功させる。2016年現在「日本青年協議会」の会長でもあり、「日本会議」の事務総長でもある。「日本青年協議会」は「日本会議」の事務局として、表に出ることはほとんどないが、運動の立案、リソース配分、進捗(しんちょく)管理などの重要な推進母体の機能を果たしている。
衛藤晟一∶ 安倍総理大臣の首相補佐官。「日本青年協議会」の設立30周年記念誌の没頭ページに椛島、百地、高橋らとともに彼の写真が掲載されていることから、「日本青年協議会」の幹部だと推察される。
百地章(ももち あきら)∶ 1969年に、「生長の家」信徒の運動を母体とする「全日本学生文化会議」が結成されたとき、結成大会の実行委員長を務めた人物。その後「日本青年協議会」の改憲論のイデオローグとして活動を続けてきた。彼が「祖国と青年」に寄稿した改憲記事から生まれたのが「女子の集まる憲法おしゃべりカフェ」という企画だ。菅義偉官房長官が「集団的自衛権を合憲とする憲法学者の具体名」として挙げた3名のうちの一人でもある。朝日新聞の従軍慰安婦像に関する記事に反発して結成された「朝日・グレンデール訴訟を支援する会」という団体の代表、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の幹事長、「『二十一世紀の日本と憲法』有識者懇談会」の事務局長などを務めている。「谷口雅春先生を学ぶ」創刊号の編集人でもある。
高橋史朗(旧姓土橋)∶「生長の家学生会全国総連合」の委員長を務めた経歴があり、「日本青年協議会」の幹部であるとみなされる。「生長の家」創始者の谷口雅春著「御守護(神示集)」が1982年になって出版されたのは、同書が占領軍の事前検閲で出版されずにいたのを、高橋史朗が留学中に米国の保存文書の中から探し出したおかげだった。2015年に日本政府がユネスコに提出した「中国による、南京事件の記憶遺産登録」に反対する意見書の起草者でもある。意見書の中で高橋は、「南京事件への反証」として、南京虐殺を捏造だと主張する歴史学者の東中野の著作を引用している。高橋史朗は、
「トンデモ」科学の一種と菅野氏がみなしている「親学」の提唱者でもある。
伊藤哲夫∶「成長の家」青年会の元幹部で、「中央教育宣伝部長」だった経歴を持つ。「保守革命」を標榜する「日本政策研究センター」の代表で、安倍晋三を「保守革命を担うリーダー」とみなす。安倍総理の「筆頭ブレーン」であり「安倍政権の生みの親」と呼ばれる。彼の「保守革命」の内容は「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」で、安倍内閣のテーマとも一致。同「センター」が改憲の優先順位を「緊急事態条項」「家族保護条項」「自衛隊の国軍化」としている点も自民党の改憲の動きと一致。さらに驚愕すべきは、同「センター」主催のセミナーで、「最終的な目標は明治憲法復元にある(長年その運動をしてきた)が、急に同意を得ることは難しいから、合意を得やすい条項から憲法改正を積み重ねていくのだ。」という趣旨の説明を、セミナー参加者にしている点だ。
中島省治∶「生長の家原理主義」運動団体の最大のものである「谷口雅春先生を学ぶ会」の会誌「谷口雅春先生を学ぶ」創刊号の発行人。創刊されたのは「急激な右傾化路線」が始まった2002年。以来、この運動が、政治の世界だけでなく、市民社会の中にあって、ファナティックな右傾化風潮を醸し出す要素の一つになっている。「チャンネル桜」やヘイトデモがそのいい例だ。(セ森友学園問題で一躍有名になった)塚本幼稚園は教育勅語を暗唱させるだけでなく、「谷口雅春先生を学ぶ会」イベントの開催地にもなっている。
「生長の家原理主義運動」の隠れたカリスマ的存在である人物
安東 巌∶9年間の病臥の後「生命の実相」(谷口雅春著、「生長の家」の経典)に触れ復活。27歳で高校に復学。1966年以降、民族派の全学連「全国学協」の書記長として「長崎大学学園正常化運動」を成功させる。「学協運営の手引き」という詳細なマニュアルをまとめあげ、椛島と協力して「運動の標準化・マニュアル化」に務める。1971年、「『理想世界』(青年会の機関誌)100万部運動」をスタートさせ、3年後に目標を達成させた。これで彼の権威は揺るぎないものとなる。1979年、「生長の家政治運動」の頂点「現行法制化運動」が結実したタイミングで、その運動の最要職である「政治局政治部長」を務める。1980年、「わが思いひたぶるに」を出版。「生長の家政治運動」はその後、玉置和郎・村上正邦といった総裁選にも影響を及ぼすほどの一大勢力となったが、その実務は安東に取り仕切られていた。「稀代のオルガナイザー」「天才的組織人」と評され、最前線から姿を隠した今も依然として陰で実権を握り、上記の人々の運動全体を見渡す立場にいる。
「生長の家」起源の「対左翼」運動を通して、上記の人々が悟ったこと
▸気分と雰囲気で流される有象無象の大衆たちに依拠しているだけでは、「対左翼」の戦いで勝利しえない。「執行部を支えるものは、無関心派、無責任的行動をとる一般人ではなく、日本人だとの自覚を持つ強力な一つの組織だ」という認識で、運動を「組織化」することに専念する。➡「日本会議」
▸理論学習のために、機関誌発行やセミナー開催に務める。
▸「戦いに敗亡しても、いつまでも立ち上がれる場」を確保する。➡ 「日本青年協議会」「日本政策研究センター」「谷口雅春先生を学ぶ会」などの運動体
締め括り上記の人々は、どんな左翼・リベラル陣営よりも頻繁にデモを行い、勉強会を開催し、陳情活動を行い、署名集めをしてきた。50年に近い歳月を経て培ってきた運動のノウハウの総力をあげて、今、「改憲」という結実を迎えようとしている。改憲プランは「緊急事態条項」しかり「家族保護条項」しかり、およそ民主的とも近代的とも呼べない、本音に「明治憲法復元」を隠した古色蒼然たるものだ。しかし彼らの手法は間違いなく民主的だ。これまで日本社会が嘲笑し足蹴にしてきた「民主的な市民運動」を、きわめて非民主的な思想を持つ人々が長年にわたり地道にやり続けていたのだ。この人々の「民主的な市民運動」が、その「民主主義」を殺そうとしているとは、なんという皮肉か!こうなったら我々市民は、「民主主義を生かすことができるのは『民主的な市民運動』だ」という原点に希望を見いだすしかない。賢明な市民が連帯し、彼らの運動にならい、地道に活動すれば、民主主義は守れる。絶望するにはまだ早い。
※ 安倍総理はなぜ日本国憲法を忌み嫌うのか――『日本会議 戦前回帰への情念』著者、戦史研究家・山崎雅弘氏に岩上安身が訊く!「自民党改憲草案は『国家神道』の封印を一つ一つ解くものだ」http://iwj.co.jp/wj/open/archives/348288 2016/11/29(イントロ動画 15分 36秒)
※ 第39回メディアを考える市民のつ どい「安倍政権と日本会議はなぜ『日本国憲法』を敵視するのか」山崎雅弘氏講演 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/352893 2016.12.18