♣二つの演説、二つの世界観 2022.12.21 クリストファー・http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2022/12/post-ab2c8c.html (強調はセワヤキ)
1946年3月5日ウィンストン・チャーチルはミズーリ州フルトンで有名な平和の源泉の演説を行い「ヨーロッパ中に鉄のカーテンが降りた」と主張したことで有名だ。明確に事前承認され、おそらく部分的にハリー・トルーマン米大統領のスタッフが書いた演説で、演説の本質的狙いは世界に対する英米覇権を宣言することだった。
2022年10月27日プーチン大統領はバルダイで世界史的演説を行い、アメリカ覇権、それとともに英語圏諸国とヨーロッパ同盟諸国の終焉を語った。プーチン大統領が、国家間に引かれた鉄のカーテンという概念を、文明の調和という概念に置き換える世界観を表現するのに使用した言葉なので、これは「文明の調和」演説と呼ぶべきかもしれない。
二つの演説は世界史のある時代の始まりと終わり、最初の時代を克服する別の時代の始まりの表現で、異なる二つの世界の二つの世界観表現だ。(セワヤキ注:この後に続くチャーチルの演説については省略します) 76年後の2022年10月27日、プーチン大統領はヴァルダイで、チャーチルとトルーマンが創造しようと意図した英米同盟の世界権力の終焉を語る演説をし、根本的に異なる世界観の到来を告げた。
プーチン大統領は、全文読むべき長い演説の中で多くのことを述べたが、本質は次の声明に含まれている。(セワヤキ注: 日本語字幕付き全編動画はここをクリック)
「ソビエト連邦の崩壊は地政学的勢力の均衡を混乱させた。欧米は勝者と感じ、その意志、文化、権益だけが存在する権利を持つ単極世界構造を宣言した。今や世界情勢における無限の欧米支配というこの歴史的時代は終わりに近づいている。単極世界は過去に追いやられている。私たちは歴史的岐路に立っている。私たちは第二次世界大戦終結以来おそらく最も危険で予測不可能であると同時に最も重要な10年を迎えている。欧米は単独では人類を支配できず、大多数の国はもはやこれを我慢したくない。これが新時代の主な矛盾だ。古典を引用すると、これはある程度革命的状況だ。エリートはそうできず、人々はもはやそのように生きたくないのだ。」
そして
「未来の世界構造が私たちの目の前で形成されつつある。この世界構造では、我々は誰にも単一の真実を押し付けることなく、全員の意見を聞き、全ての意見、全ての国、社会、文化、体制、考え方、宗教的概の全てを考慮しなければならない。この基盤上でのみ国家と地球の運命に対する我々の責任を理解し、我々は人類文明の調和を創造するだろう。」
彼は続けて本質的に英米秩序である有名な「ルールに基づく秩序」を攻撃した。
「私たちは権力者(連中は権力について話しているが私は今グローバルパワーについて話している)がルールに全く従わずに生き、何をしても罪に問われないという一つのルールを押しつける試みを目にしている。これらは人々が言う通り、私たちが絶えず耳にするルールで、連中は繰り返し話し続けている。」
そして欧米の意図を説明する。
「グローバルパワーには、まさにいわゆる欧米の利害が掛かっている。しかし、このゲームは確実に危険で、血まみれで、汚いと言えるだろう。それは国や人々の主権、彼らのアイデンティティや独自性を否定し、他の国々の利益を踏みにじる。いずれにせよ、否定的な言葉が使われていなくとも彼らは実生活でそうしている。これらルールを作成する連中を除いて、誰も彼らのアイデンティティを維持する権利はない。他の全員これらルールを遵守しなければならない。」
更に世界の政治、経済問題は、人類に対する気候変動や生態学的危機の根本的脅威からの目をそらすものだと彼は指摘する。
「現在開発は環境問題に影を落としている。奇妙に思われるかもしれないが、これが私が今日最初に話したいことだ。気候変動はもはや第一の議題ではない。しかし根本的課題は消えたわけではなく、今も私たちと共にあり増大している。生物多様性の喪失は、環境バランスを乱すことによる最も危険な結果の一つだ。」
彼はこの話題を続け、世界にその文化、支配、搾取を採用し従うよう強制し世界危機や今日のウクライナでの出来事につながる欧米の試みを攻撃する。彼はこう述べた。
「文明化された」欧米はどのような立場を採用しているだろうか? 民主主義者なら、何十億もの人々が表明する自由への自然な欲求を歓迎することになっているが、そうではない。欧米はそれをリベラルなルールに基づく秩序を弱体化させると言う。経済戦争や貿易戦争、経済制裁、ボイコットやカラー革命に訴え、あらゆる類のクーデターを準備し実行している。
「そのうちの一つは2014年にウクライナで悲劇的結果をもたらした。彼らはそれを支持し、このクーデターに費やした金額さえ特定した。彼らは好きなように振る舞う厚かましさがあり、彼らが何をするにも何のためらいも感じない。彼らはイラン人将軍ソレイマニを殺害した。ソレイマニについて好きなように考えられるが彼は外国の役人だった。彼らは第三国で彼を殺し実行したこと認めた。何ということだろう? 私たちは一体どのような世界に暮らしているのだろう?
慣例通り、ワシントンは現在の国際秩序をリベラルなアメリカ式と呼び続けているが、実際この悪名高い"秩序"は日々混沌を増大させており、欧米諸国や、独立して行動しようとする欧米諸国に対してさえ益々不寛容になっている。全てがつぼみのうちに摘み取られ、彼らは完全に服従して頭を下げる同盟国に制裁を課すのも躊躇しない。」
(…)これに関連して世界の多様性をよりよく反映するため国連安全保障理事会改革が考慮されなければならないと彼は述べた。「結局、明日の世界では今一般的に信じられているより遙かに多くのことがアジアやアフリカや中南米に依存しており、これらの影響力の増加は間違いなく前向きな進展だ。
だから私たちはそれがある、二つの演説、二つの世界観、一つの時代の終わり、新しい時代の始まり。
プーチン大統領のこの言葉で締めくろう。
「人類の団結は『わたしがするようにしなさい』や『私たちのようになりなさい』など命令を出すことでは生まれない。団結は全ての人の意見を考慮し、全ての社会や全ての国のアイデンティティへの慎重な対応で作られる。これは多極世界における長期的協力の根底にある原則だ。」
(2023年1月1日 セワヤキ)