衆議院選挙で見えてきたことは…
♣第49回衆議院選挙結果分析(日刊IWJ 2021.10.07参考)
小選挙区 60以上の小選挙区で大接戦だったのは野党共闘の効果 !
麻生太郎自民党副総裁・元総理大臣➡ 3万410票減
安倍晋三元総理・自民党憲法改正推進本部最高顧問➡ 2万4377票減
甘利明自民党幹事長・元経済再生担当大臣➡ 2619票減っただけで小選挙区落選したのは野党共闘効果!
総裁選敗北の河野氏➡ 5万票以上積み増して21万票を集めて全議員の中で最多!
比例区(長期的なトレンドを見るのに適している)
与党(自民、公明)➡2702万9165票で149万5736票の減
野党改憲派(維新、国民、N党)➡1144万873票で162万3748票の減、
野党非改憲派(立憲/共産/れいわ/社民)➡1889万2309票で246万2014票の増!
全体のトレンドとしては、むしろ非改憲の方向に世論は少し動いた。
自民党が15議席も減らしたにもかかわらず、どこか自民党勝利のムードが漂っているのは、今回の衆議院選挙の隠された主題が「改憲」だからか? いつ改憲に向けた動きが顕在化してもおかしくない。一挙に候補者を増やした維新と、改憲に前のめりな姿勢を見せる国民民主党が、どれだけ議席を獲得したかが重要だ。自民自身は議席を減らしたものの、公明は微増、自民の「別動隊」の維新は、4倍増と躍進し、国民民主も微増させました。残念ながら、改憲に必要な3分の2の議席を超え、4分の3に迫る議席にまで到達。国民投票法にCM規制がない現状を利用して、これから改憲勢力は、改憲CMや改憲に向けた番組や報道を通じ世論形成を推進していくと思われる。
投票日以前の報道を見ても、自民党総裁選報道が過剰だったのに比べ衆院選に関する報道は激減した。その少ない報道も、野党共闘に水を差す報道や野党支持者が油断をするようなものを繰り返した。結果、投票率も上がらず、事前の予測と逆に立憲・共産の野党共闘が議席を減らしてしまった。
♣立憲民主党は「他人(共産党)の褌で相撲をとった」?
※立憲が大惨敗した本当の理由 2021.11.02植草一秀の『知られざる真実』
(…)枝野立憲が支持されなかった最大の理由は枝野幸男氏が野党共闘に背を向けたことにある。(…)今回の総選挙直前に枝野幸男氏は記者に対してこう述べた。「『野党共闘』というのは皆さんがいつもおっしゃっていますが、私の方からは使っていません。あくまでも国民民主党さんと2党間で連合さんを含めて政策協定を結び、一体となって選挙を戦う。共産党さんとは(共産、社民、れいわの3党と一致した政策に)限定した範囲で閣外から協力を頂く。」枝野氏は、共闘の対象は国民民主と連合であって、共産、社民、れいわとは共闘しないことを宣言した。10月23日に都内で行われた市民団体のイベントでは、憲民主党の枝野幸男代表が共産党の志位和夫委員長との記念写真撮影を拒絶した。枝野氏は野党共闘を推進したのではなく、野党共闘に背を向ける対応を示し続けた。(…)
♣「若者の投票率が低い理由」を宮台真司氏が分析
※「これがマル激的総選挙・最高裁審査の争点だ」2021.10.30
必見⇨https://www.videonews.com/marugeki-talk/1073
▶35分20秒経過~【1946年~2017年までの衆議院選挙の投票率】➡ 小選挙区制になってから投票意欲が低下していることがわかる
▶38分17秒経過~【2010年~2018年までの国政選挙の平均投票率を国別比較】➡ 日本はOECD36カ国中30位で、56%の投票率
▶45分35秒経過~1時間14分20秒経過【1989年~2019年までの参院議員選投票率を20代~30代と60代~70代に分けて比較】➡ 2019年には前者は35,3%、後者は64,7%の投票率だった。しかも、前者の人口自体が後者よりずっと少ない上に、一票のもつ重さの格差を考慮すると若年者層は高齢者層の8倍の努力を必要とする。
若者の投票率が低ければ、当然、政治は高齢者層の権益を守るという方向になる。皮肉なことに、それでも若年者層は現政権(=既得権益の保持勢力)への支持率が高い。その理由は、若い世代は非正規雇用が多くJapan As Number Oneだった昔を知らないので安倍政権下で、雇用所得がチョビっと上がると現政権支持に回ることにある。既得権益にへばりつくのは、本来、若者ではなく先が短い高齢者の方であるはずで、若年者層の投票率が高齢者層の半分というような現状は、将来の長い若年者層にとってけっこうヤバイことなのである。
それにもかかわらず、彼らの間では政治の話がタブーになっている。政治的価値観はコミュニケーションによって養われるのだが、仲間で集まっても政治の話題がタブー視されているために政治的価値観は育たないのだ。その原因は、若者達が自尊心(自分は価値があると思う心)を持てなくなっていることにある。自尊心がなければ自分を守ることに必死でコミュニケーションをしなくなり、その結果、政治的価値観が養われなくなる。自尊心が低ければ政治への関心が相応に低くなる。
日本で自尊心が養われないのには、家族が空洞化している(愛がない)ことがある。他の国では「お金がないから結婚する」のだが、日本では「お金がないから結婚できない」と考える。シェアハウスが話題になるのも家族形成ができないことからきている。
また、残念ながら、日本の夫婦には子育てのノウハウ(規範)がない。夫婦が愛し合っている家庭では「金より愛」が重要なので、「勝ち組」か「負け組」かは子育ての際に問題にならない。反対に、「愛より金」の家庭では、「勝ち組」になることが目標なので、愛を受けることがなく、子供の自尊心は育たない。愛は学ばれるもので「愛より金」の日本の夫婦のもとで育った若者は、「愛」がわからず、代わりに「性的関係」を多く持つ傾向にある。昔は周りにも地域関係があってそれでも子供は育ったが、地域が空洞化した今は、夫婦は家族の規範を持たず、「勝ち組、負け組」の教育をしている。
金では自尊心は買えないわけだから、政治的価値観も持てない。それが若年層の投票率が低い理由だ。そういう構造から、経済人、役人、政治家達がリクルーティングされているのが日本の現状である。
♣『なぜ日本は没落するのか』岩波現代文庫 960円+税 2010年7月発行。
(…)高等教育をどのように改革して、どのように才能の優れた官僚、会社員、文化人が育てられたとしても、政治家の質が悪ければ、その国は尊敬されることはない。(…)。(以上http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-beee.html の訳者コメントよリ)