「私が原発を止めた理由」元福井地裁裁判長 樋口英明氏が語る
※水戸地裁の東海第二原発差し止め判決!訴訟団が判決文の一部を披露2021.3.27 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/490406
♣原発推進政策に忖度する判決ばかり出る中、「理性と良識」を重んじて3.11後初となる原発の運転差止め判決を下した元裁判長が「私が原発を止めた理由」を語る! 2021.3.10 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/489677 (動画14分44秒)
樋口英明氏は2014.05.21、大飯原発運転差止めの判決を福井地裁の裁判長として言い渡した。これは、福島第一原発事故後初の原発運転差止め判決となる画期的な判決となった。2017年8月退官語、「原発は非常に危険で、この問題は日本が滅びるかどうかの最優先事項だ。そういう時に自分の出世など考えていられない。」と、一般常識に反し、弁護士になる道を捨てた。以後、「危険を知った者はそれを広く知らせる責任がある」と、裁判を通じて学んだ原発の危険性を広く伝えるための講演を行っている。必読の書『私が原発を止めた理由』の著者。(以下、要旨)
原発を実際に止めさせられるのは裁判官だけだが、大抵の裁判官は「原発が危険であること」を知らない。これまで「差し止め判決」を出した裁判官が二人しかいないのはそれが理由だ。裁判官は被告原告両サイドから出された資料しか判決の根拠として使えない。だから、たとえ原発推進派であっても認めざる得ないような、誰にも否定できないような、科学的な論法が要になる。
事故の危険性は「事故の起こる確率」と「被害の重大さ」で判断
事故の起こる確率(ガルは地震によってかかる瞬間的な衝撃力
▶関西電力は『700ガル』を原発建設の基準に考えている。例えば、幼稚園のブランコを考えるとき、安全基準は、5才児の体重の平均に合わせるのではなく、最も体重がある園児に合わせなくてはならないというのが常識感覚。
実際に、ガルを計る地震計が全国に設置されるようになった2000年以後に日本全国で起きた主な地震をみると、700ガル以上の地震は、先日の2月13日の東北沖を震源地とする地震を含めると31回起きている。2004年の新潟県中越地震は2515ガル、2008年の岩手宮城内陸地震は4022ガル、2011年の東北大震災は2933ガル、2016年の熊本地震は1740ガル、2018年の北海道胆振東部自身は1796ガル。➡関西電力の『700ガルを超える地震は福井原発では起こらない』は非科学的。
▶日本列島は4つのプレートに乗っており、世界で起きる地震の10%以上が日本で起きている。いつ地震が起こっても不思議ではない。極めて危険である。安全保障の問題として、北朝鮮や中国の脅威より切迫していてはるかに危険なのが原発だ。
▶「事故の被害が大きいのだから、その分、耐震性も高いはず」というのは思い込み。耐震性の比較では、日本の原発は一般ハウスメーカーに劣る耐震基準で設計・建造されていて、とても『原発は固い岩盤の上に建っている』などとはいえない。(耐震性ハウスメーカーランキングhttps://iezukuri.blog/housemaker-earthquake/)
▶『地震の予知』は失敗し続けています。地震学は「観察できない」「実験できない」「資料が20年分しかない」の三重苦で地震予知はできない。
被害の重大さ
▶日本の原発一基が爆発したときは広島原発の1000倍の破壊力を持つ。映画「日本と原発」監督で弁護士の河合弘之氏が「原発は自国に向けた核兵器」と言っている。こと原発は『禁忌』(絶対に選んではいけない選択肢)の問題だ。そもそも「絶対に始めちゃいけない」ことに原発は属するのだ。「それをやったら取り返しがつかないことになる」のが原発なのだ。
1955年に中曽根首相は『原子力はいまや家畜となった。猛獣だと思っている国民を啓蒙する必要がある』と言った。他方ドイツのハイデガーは戦後『人が常に管理し続けなければならないということは、人が管理できないのと同義である。』と言っている。檻の中の普通の『猛獣』は、人が世話ができなくなれば死んでしまう。火力発電は発電を止めればそれで危険は避けられる。ところが原発という普通でない猛獣は、人が水や電気を使用しての管理ができなくなれば、檻を破って暴れだすのだ。人がずっと管理し続けなければならないということだけでも怖いことだが、日本の場合その管理の質がものすごく低い。700ガルで管理しているつもり。
▶(核武装を考えてので原発推進という『国策』について)『危険な原発は動かさない』という『国策』に賛成だ。すべての原発はきわめて危険。国の国家安全保障を脅かすほど危険。『仮想敵国による攻撃』などという空想の世界の話でなく、『明日どの原発を700ガルを超える地震が襲うかわからん』という危険のほうが、現実的で、切迫して、国の安全保障にとっては、はるかにデカイ問題。国防ほど大事なことはない。国を守るにはリアリティーが必要だが、それが欠けている。北朝鮮の脅威を考えるのに、リアリティーのある脅威は何かと言えば、彼らが海岸沿いに乱立の原発に対してどういう行動をとるのかということだ。それをリアリティーを持って考えなくてはならないが、それができないのであれば、国を守る任務を担う資質に欠けるしその資格がない。
▶福島原発事故では奇跡が起きていた。気体放出のためのベントに失敗した2号機が、何らかの原因で気体が外界に漏れ出たおかげで、爆発を免れたこと。たまたま定期点検中であった4号機では、作業のために水が多量に補給され核燃料棒は仕切りで隣接の使用済み核燃料プールに一時的に収められていた。その仕切りが何らかの原因でズレたおかげで、プールに水が流れ込み、メルトダウンを避けられた。いずれその水も蒸発して無くなってしまうはずだったのだが、偶然に起きた小爆発でプールの建屋の屋根が破壊され、外から水を補給することが可能になった。これらの偶然に偶然が重なっていなかったら、北半球が住めなくなるような、とりかえしがつかない大事故になる可能性があった。
▶「原発での発電は熱効率が悪く(熱量の3分の1しか電気にかえられない)、海に捨てられる熱量(海水による冷却=海水が温められる)は凄まじい量になる。普通の原発一基で1秒間に70トンの海水の温度を7℃上げる。CO2による間接的な地球温暖化に比べ、原発は直接的に海水を温める装置になっている。原発を作る過程でも嫌というほどCO2を出すし、廃炉になったとしても核燃料をずっと(~万年)管理しなくてはならない。その管理の過程で出るO2の量は計算不能なほど。だから、原発はCO2の問題解決に最も反対のもの。温暖化防止に一番反対なことが原発。
※樋口判決(原発差し止め判決)に向き合う(津市)―登壇 福井地裁・樋口英明元裁判長、河合弘之弁護士 2019.4.28 必見⇨ https://iwj.co.jp/wj/open/archives/447685
※「原発を止めた町」――三重・芦浜原発三十七年の闘い 著者北村博司