「学問の自由」は国を照らす燈台!
■「菅義偉首相による日本学術会議会員の任命に関する声明(2020.10.6)」(立憲デモクラシーの会 2020.10.06)https://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/post/631118230292971520/%E8%8F%85%E7%BE%A9%E5%81%89%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%AD%A6%E8%A1%93%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E5%93%A1%E3%81%AE%E4%BB%BB%E5%91%BD%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E5%A3%B0%E6%98%8E2020106
(…)学問研究の成果が、しばしば社会の既成の価値観やその時時の政府の政策への批判や変革をもたらすこと、そのために社会や政治部門の側からの敵対的反応を招きがちであることから、外部の政治的・経済的・社会的圧力に抗して各学問分野の自律性を保護すべき必要性もそれだけ大きい。日本国憲法が学問の自由を保証する条項を特別にもうけているのもそのためであるし、また、日本学術会議法が、会員の人事について同会議の独立性・自律性を強く認めているのも、科学者集団の自律性が保証されてはじめて、同会議の目的である、我が国の「科学の向上発展を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」ことが可能となるからである。(…)
■岩上氏の呼びかけに応じてIWJに寄せられたメッセージ(日刊IWJ 2020.10.07参考)
池内了名誉教授(名古屋大学 宇宙物理学)
政府は一切理由を明らかにしないことを通じて、学者はむろんのこと国民全てに、政府の気にいらいないような発言を避けよう、そしてそんな人物はどんな役職でも推薦しないでおこう、という雰囲気が広がり、右へ倣えの一色の社会になっていくことを強く危惧しています。 学者だけの問題にとどまらず、上の者の意向を斟酌するのが当たり前になる、そんなうすら寒い日本の光景を思い浮かべてしまいます。 日本学術会議は、この不当な取扱いに対して妥協せず、発令されなかった会員ポストは空席にして、何度でも発令を求めて推薦を続けることが必要です。
栗田禎子教授(日本学術会議会員 千葉大学大学院 歴史学)
あってはならないことが起きたと考えている。
(1)日本学術会議は科学の立場から、社会や国家のあり方に対し政策提言を行なう組織であり、日本学術会議法により、「210人の会員から組織される」こと、学術会議の「推薦に基づいて」首相が任命することが定められている。今回、6名を首相が任命しなかったため、会員が204名となり、第25期が「歯抜け状態」での発足となっていること、「推薦に基づき」という規定が無視され任命が行なわれなかったことは、学術会議法に明白に反しており、このような違法状態は即刻是正されなければならないと考えられる。
(2)学術会議は戦前の日本において学問の自由が保証されず、科学的・理性的政策決定ができなかったことが軍国主義の台頭や戦争につながった反省から、1949年、科学を基礎とする文化国家を建設し、平和的復興を実現することをめざして設立された。このため、学術会議は「首相の所轄」であり、会員は「国家公務員」だが、あくまで科学の立場から、時の政権におもねることなく「独立して職務を行う」ものとされ、会員は「学術会議の推薦に基づく」という規定はこのような目的を遂げるために定められている。今回のような違法行為によって、学術会議の「独立性」が脅かされることになれば、科学の立場から行政・産業・国民生活等に関する政策提言・勧告を行うという使命、(「学術会議法」に定められている、)学術会議が国民に対して負っている責務を果たすこと自体が難しくなる。
(3)学術会議はわが国の科学者を「内外に対して代表する」存在と位置づけられているが、今回のように政権による恣意的介入が行われ、独立性・中立性が担保されないのであれば、今後、日本学術会議は国際的には科学者の代表機関とは見なされなくなり、日本の科学・学術体制全体に対する国際社会の信頼自体が失われることになるだろう。
清水雅彦教授(日本体育大学 憲法学)
今回の日本学術会議が推薦した候補者を首相が拒否した問題については、日本学術会議法上の問題点などはかなり詳しく報道されているので割愛しますが、私なりにこの問題の深刻さを指摘すれば、一つは政治が学問に介入する大問題だということです。 時の権力者はガリレオ・ガリレイを弾圧しましたが、天空が回っているのか、地球が回っているのか、権力者がどちらが正しいかを決めることはできません。各学問分野の専門家でもない菅首相が専門家集団の推薦を拒否したということは、菅首相がガリレオ・ガリレイを有罪にした裁判官になったようなものなのです。 また、この拒否を絶対認めてはいけないのは、今回の件が前例となり、これが2回・3回と続けば、「どうせこの会員を推薦しても拒否されるだろう」といった忖度が生じてしまうことです。絶対にこのような拒否行為を認めてはいけません。
高山佳奈子教授(日本学術会議会員 京都大学大学院 法学)
私は学術会議の中の人間ですので、現在中からの発信を他の会員の先生方と一緒に準備しています。軍学共同が狙いだというのは、前川喜平氏もAERA.dotでおっしゃっていましたでしょうか。ただ、軍事研究反対の意見を持つ方々で会員に任命されているケースも複数あるので、なぜこの6人が選ばれたのかは内部の私たちにもよくわかりません。学術的業績が特に優れているために影響力が大きいと考えられたのでは、と今は思っています。 もっとも、理系の先生方も総会では全員、任命を求めることに賛成されました。反対者は邪魔だからいらない、と思っている方はいないことになります。理系の会員の先生の中にも、反対の行動を準備してくださっている方々が出ているようです。学術会議の提言を私の上司としてまとめられた方も含まれています。 補足ですが、重要な研究者であることのほかに、日本会議にとって、いないほうが良い分野というのもあると思います。(その分野: 憲法・行政法・刑事法、キリスト教学、日本近代史、西洋政治思想史)
《緊急声明》
菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、撤回を求める
2020年10月5日
軍学共同反対連絡会 http://no-military-research.jp/
池内了・共同代表(名古屋大学名誉教授)
香山 リカ(立教大学教授)
野田隆三郎(岡山大学名誉教授)
2020年秋の日本学術会議会員の交代に当たって、菅義偉首相は、日本学術会議から推薦された105名の候補者のうち6名の会員任命を拒否した。この事態は、日本を代表する独立した学術機関である日本学術会議の意志を無視した政府からの人事介入と捉えざるを得ず、学問の自由を踏みにじる重大行為として強く抗議し、ただちに撤回するよう求める。
学術研究は、時の政府の意向とは独立した論理で進められるべきものであり、それを保証する大学の自治や学問の自由の根幹は、戦前の経験を想起するまでもなく、科学者の職務上の地位がいかなる状況においても尊重されるということにある。日本学術会議からの会員候補者推薦は、学問上の業績に則って行われたものであり、政府がその推薦に応じてそのまま任命することこそが、学問の自由を尊重することは言うまでもない。
しかるに、今回の日本学術会議会員の任命拒否は、1983年5月の国会においてなされた「日本学術会議からの推薦者を任命権者である内閣総理大臣が任命・発令するのは形式的行為である」との確認を政府が一方的に反故にしたものであり、日本学術会議の政府からの独立性(日本学術会議法第3条)をふみにじる違法なものである。任命を拒否されたのは、これまで政府に対して批判的な科学者が多いと伝えられており、時の政府が批判的な科学者を排除し日本学術会議を統制していくならば、政治の多様性のみならず、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにする」(日本国憲法前文)ための民主的歯止めも失われかねない。これまで営々として構築してきた日本の民主的システムを一層蝕んでいくことになるのを強く危惧している。
私たち軍学共同反対連絡会は、戦前の日本の科学者たちが軍国主義政府に追随して侵略戦争に加担した歴史を反省して、科学者が軍事研究に手を染めることに反対する活動を続けてきた。その際に、日本学術会議が発した「軍事研究には絶対に従わない」との二度の決議と、それを継承する2017年の声明が大いなる導きとなってきた。今回の任命拒否には、日本学術会議声明が大学における軍事研究を抑制している現状を変えようとする狙いも込められていると報じられており、その点でも私たちは断じて許すことはできない。
日本学術会議は、単に日本の学術を代表する機関であるにとどまらず、科学者に対して自らの学問的良心と科学者としての倫理を想起させるとともに、広く学問の在り方を点検するための重要な機関である。私たちは、日本学術会議が任命拒否に怯むことなく、また学問の論理を追求することを怠らず、これまで通り学術の独立性を保つ姿勢を毅然として持ち続けることを強く期待している。
■菅とメディアの甘い関係(東京新聞記者 望月衣塑子)デモクラシータイムス 2020.10.07 https://www.youtube.com/watch?v=OdbH05m-qvg