「不朽の自由作戦」&「自由の番人作戦」アフガンから始まった欧米の対テロ作戦はこう命名されていたが、この「自由」とは、一体全体誰のための自由なのか? この問に「100の診療所より1本の用水路」の中村哲医師ならどう答えただろう…
♣これらの「作戦」の成果は?
※中村哲氏「アフガニスタンに生命の水を」 2015年の講演より再掲
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/14551
(…)タリバン政権が11月になって崩壊し、米軍の進駐が始まった。世界中で「極悪非道の悪のタリバンをうち破り、絶対の自由と正義の味方、アメリカおよびその同盟軍を歓呼の声で迎える市民の姿」「女性抑圧の象徴であるかぶり物を脱ぎ捨てて、自由をうたう女性たちの姿」の映像が、くり返し嫌というほど流された。この戦争に反対していた人も「そんな悪い人たちがやられるのならよかったのではないか」となり、アフガニスタンは忘れ去られていった。(…実際には)解放されたのは「ケシ栽培の自由」「女性が外国人相手に売春をする自由」「働き手を失った人人が街頭で乞食をする自由」「貧乏人が餓死する自由」だといって間違いではないと思う。実際に当時、飢餓線上の人口は400万人といわれていたが、現在760万人に増えている。アフガニスタンはますます窮地に立たされている。(…)
※「帝国の墓場」アフガニスタンから米軍が撤退!ゲスト 放送大学名誉教授高橋和夫氏 2021.9.5 https://iwj.co.jp/wj/open/archives/495930 キーワード: 腐敗!
《要点: 米国が仕立てたアフガン政権は上から下まで腐敗していた。アメリカ側の腐敗もあって、注ぎ込んだ2兆ドルのかなりの部分はアメリカ軍にぶらさがる業者の手に渡っていた。アメリカ軍のマクリスタル将軍、ペトレイアス将軍、みんなビジネスを始めて大儲けをしている。最後の段階で空軍を持っていたアフガニスタンの政府軍が突然崩壊した理由は、20年間もいたのに米側が飛行機の整備を教えていなかったからだ。整備にはアメリカの契約会社が入っていて、そこでもぼろ儲けする仕組み!》
※「非民主的な民族に民主主義を施すには戦争で打ち負かすしかない」!?2010.08.17 https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakayoshitsugu/20210817-00253579
(…)戦線をイラクに広げ、イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由で、イラクに先制攻撃を仕掛けた。しかし大量破壊兵器がないことをそれより前にCIAは把握しており、サダム・フセイン大統領を抹殺するのが目的だったことが後に判明する。 理由はサダム・フフセインがEUの統一通貨ユーロで石油代金の決済を認めたため米国の逆鱗に触れたのだ。(…)EUの中心国フランスとドイツはこの戦争に反対し、英国や日本が米国を支援した。
※彼らの生き方ではなく我々の生き方を変えなければならない 2021.08.20
必読⇨ http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2021/09/post-4180c1.html
(…)20年間、アフガニスタンの人々に80,000発以上の爆弾やミサイルを落とし、何十万人も殺し、彼らの家を破壊する以外、彼らの生き方を変えることに失敗した今、我々は、(…)我々の生き方を変えなければならない。 (…)
♣「100の診療所より1本の用水路」中村哲医師の思いは…
※アフガニスタン 永久支援のために 中村哲 次世代へのプロジェクト2016.04. 01https://www.youtube.com/watch?v=kjk3lgS7_1g
《要約: 気候変動の影響で起きるようになった洪水と渇水でアフガニスタンの農地は砂漠化し、国民のほぼ100%が農民という国で農業ができなくなった。病人がでるのは飢餓が原因だと判断した中村哲医師は「100の診療所より1本の用水路」の掛け声でクナール河から取水する用水路建設を始めた。電気もない現地を考慮して、300年前の日本の農民の知恵、江戸時代の治水技術(福岡県朝倉市の山田堰など)を活かし、(針金製)蛇籠に石を詰めて用水路を作り、取水口には泥を沈殿させる溜池を設け水のみが用水路に流れ込むように工夫した。蛇籠には植林された柳の根が石を抱え込むようにしっかり張るので、針金が錆びてだめになってもかまわない。洪水にも渇水にも強く、砂漠化していた農地がすでに蘇っている。2020年までには65万人が生活できるまでになる見込みだ。
用水路はついに死の谷「ガンベリ砂漠」にまで届いた。そこに農業試験場を設け、約80家族が移り住み、25,5kmの用水路を守る村ができ. 「地元民の手で末永く保全できるようにする」が中村氏のやり方だ。
一時帰国中の公演で中村氏は「『アメリカ対テロリストの戦いだ』というのは一種のフィクションだということを知っていただきたい。戦いでものごとを解決するというやり方はもう行き詰まっていると口を酸っぱくして述べたいと思います。」と訴えたが、『テロリスト寄りだ』という批判にもさらされた。
中村氏、同じ趣味を持つ虫好きの養老孟司氏に語る:「アフガニスタンの普通の人の、食べ物にも苦労する生活について伝えると、『反米的』だとか『タリバンの肩を持つのか』とか『中立的でない』とかの政治的な意見に置き換えられて見られてしまう…この戦争は道義上もう敗北したと言っていい。アフガン人は何も悪いことをしていないわけですから…アメリカに攻めていったわけでもないし。『テロリスト』と言われる人達を一部の人たちが匿ったというだけですから、『あそこまでしなくったって』と誰もが思う。私はどちらが勝つかには関心はない。ただ普通の人が普通の生活をしてくれればいい。」
アフガニスタンに戻った中村氏: 「この地域が豊かな平和な地域になれば、それが一つのモデルとなってアフガニスタン中に広がっていけば、それでいいんじゃないかと。これでやっと本来のあるべき目的が見えてきたという感じがします。」》
※書評:『武器ではなく命の水をおくりたい 中村哲医師の生き方』 著・宮田律2021.09.02 https://www.chosyu-journal.jp/review/21685
(…)注目すべきは、この土木工事にアフガニスタンの多くの人たち――政府軍の元兵士やタリバンの元兵士たちが銃を捨てて、また戦争を逃れて難民になった人たちも――が雇用されたことだ。同国では失業率が40%をこえ、元兵士たちは職がなければ戦争に戻ってしまう。そして用水路は、彼らが農業によって自立した生活が送れるよう支援するものになっていった。先進国の復興支援といえば、ゼネコンや大企業が乗り込んで収奪し、その国の自立ではなく従属に追いやるのが常套手段だ。ところが中村医師がやったことは、現地の農民たちがみずからの手で水の管理や農地の拡大、農業技術の向上をはかることを手助けする(そのためにトレーニングセンターや学校もつくった)ことであり、それを今後幾世代にわたって現地で生き続ける力にすることだった。それによって、難民がどうすればふるさとの日常をとり戻すことができるかを示したといえる。(…)また彼は、アメリカの、「遅れた宗教や文化を“民主主義”で是正してやるという思い上がり」を厳しく批判していた。タリバンの政府になろうがなるまいが、それはアフガニスタンの人々自身が決めることなのだ。(…)
※【京都環境文化学術フォーラム】記念講演(中村 哲)16.03.2017
https://www.youtube.com/watch?v=zuEY9Ib9wAM 30分15秒経過からのみ要約:
《最後に言いたいことは、軍事力、経済力で何でもできるという錯覚を、世界は捨てることだ。『消費・生産』を無限大に繰り返さないと成り立たない世界(資本主義社会)はあり得ない。どう自然と折り合いをつけるのか。 用水路建設の試みを気候変動に対する一つのモデルとして提示できるように今後も力を尽くしたい。》
※総合情報雑誌『SIGHT(サイト)』に2002年から2016年の14年に渡って掲載・収録された、ペシャワール会現地元代表で医師の中村 哲氏のインタビュー 文 https://www.rockinon.co.jp/sight/nakamura-tetsu/
※『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」~中村哲が本当に伝えたかったこと』2021年10月出版予定