メディアが伝えないロシアとウクライナの女性たちの声をお届けします
■以下、【日刊IWJ 2022.0303】より
2月27日付のAERA dot.は、戦争の犠牲になってきたロシアとウクライナの女性たちの声を紹介しています。
※パパはウクライナ人、ママはロシア人の女性が語る“戦争”のリアル 「ケンカを煽り立たのは西側」(AERA dot. 202.02.27)https://dot.asahi.com/dot/2022022700011.html?page=1
(AERA dot. 202.02.27の内容をIWJが要約)
日本在住の30歳前後のロシア人女性は、ウクライナとロシア語の関係について次のように語っています。
「8年前から、ウクライナでロシア語を使うと差別されるようになったんです。だいたいウクライナ人はロシア語をしゃべるんですよ。でも、ロシア語しゃべると、差別されます。だから、ロシア語をしゃべれないフリをする」
2019年に発足したウクライナのゼレンスキー政権は、プーチン政権の情報戦に対抗するためという理由から、ウクライナ語以外で書かれた広告を禁じる法律など、ロシア語の使用を制限する政策を打ち出しました。 日本人との間に2人の子供のある40代のウクライナ人女性は、ドンバス地方(ルガンスクとドネツク)について次のように述べています。
「私はルガンスクで生まれて、18歳のころまでいました。ドンバス地域は労働者の街なんです。工場で働いたり、石炭を採掘したりするとか。ウクライナの中にいてもまったく不自由はなかった。ソビエト連邦の時は、言葉はロシア語だったんですよ。それが紛争状態になったのは8年前から...」
「ドンバス地域の人たちは8年間怖い思いしています。普通のマンション、道路、バス、学校とかにバンバン攻撃を受けてきた。いつ、どこで(※ウクライナ政府からの)爆撃を受けるかもわからない。対してウクライナのキエフの人びとは、普通に遊んだり、お酒を飲んだり、外国へ遊びに行ったりしていた」
「8年間、プーチンがこの地域の人びとを食べさせていたのです。食べ物を、ロシアからトラックで送っていたと聞いています。ウクライナからは全然ないんです」
「ドンバスでは毎日、ミサイルが飛んでいるんですよ。だから、今、ドネツクの人はこう言っている。『今、ウクライナの人は怖いんですか。私たちは8年間、ずっとそういう思いの生活でした。毎日、毎日、爆弾がどこに落ちるかわからなかった』」
「ウクライナは、ドンバスは自分たちのテリトリーだからロシア人を追い出したいと言っている。だけど、8年間のうちに、爆弾で街は半分もない。3分の1だけ残っている。あとは石だらけ」
このような、ドンバス地方出身の日本在住のウクライナ女性の言葉に、ロシアのプロパガンダや洗脳があるとは思えません。現在は、日本在住なのですから、ロシアを代弁しても何の得にもなりません。ドンバス出身で、ドンバスに多くの友人知人のいる普通の生活者の言葉でしょう。
父がウクライナ人、母がロシア人で、親戚はウクライナにも、ロシアにもたくさんいるというロシア国籍の女性がこう述べています。「私はロシア、ウクライナの両方の味方なんです」。さらに続けて、次のように述べています。
「もし、ドンバスをロシアが取り戻さなかったら、そこにアメリカやヨーロッパの軍がやって来てベース(軍事基地)を置いてしまう。ロシアに近いところだから、ロシアがすごく危なくなる。取り戻さないとロシアが弱くなるから、守らなければいけないのです」
ドンバス地方にNATO基地が置かれるというのは、NATO東方拡大のこれまでの経緯を見る限り、可能性はきわめて高いと言わざるをえません。
この話は、2016年にプーチン大統領と安倍晋三元総理が北方領土返還交渉で話し合ったときのことを思い出させます。
このとき、プーチン大統領が、「返還したら、そこに米軍基地を置かないと約束できるのか」と質問して、日本側は、日米安保条約と日米地位協定によって、米国は日本国内のどこにでも基地を置くことを求められるため、「基地が置かれる可能性はある」と回答し、交渉が決裂したのです。
ロシアやウクライナの女性たちの言葉からわかるのは、根本問題は、NATOの問題とドンバス地方のロシア系住民の問題だということです。なぜ、2つの根本問題に正面から国際社会は向き合わないのでしょうか。国連特別会合や衆議院におけるロシア非難や非難決議、欧米による経済制裁の強化やゲリラ戦用の武器の供与、ベラルーシの核配備やロシアの戦術核兵器の使用などでは、問題の根本的な解決にならず、逆に、問題を長期化させエスカレートさせるだけではないでしょうか。