新型コロナをめぐる「ニセ医学」に騙されないために
◆「新型コロナウイルスは存在しない」と断言する大橋眞徳島大学名誉教授を、内科医名取宏氏が、IWJへの【特別寄稿】で論破するhttps://iwj.co.jp/wj/open/archives/479981
(…)新型コロナウイルスをめぐる様々な怪しい言説の中でも、極めつけと言ってもいいのが、「新型コロナウイルスは存在しない」と断定する、大橋眞徳島大学名誉教授です。新型コロナウイルスの脅威やマスク着用に対して否定的なブログなどに、しばしば大橋氏の言説が引用されているのを見かけます。 「コロナはただの風邪」「マスク着用は不要」と主張したい人にとって大橋氏は、「理論」的な支柱であり、ある意味「カリスマ」化しつつあるように思われます。 また、「マスク不要」説を唱えて活動する日本母親連盟など日本会議系の極右組織の主張とシンクロしている点も気にかかります。(…)
名取氏はまず、(「コッホの4原則が満たされていない」という大橋氏の主張に関して)「専門家の間ではコッホの4原則は必ずしも満たされなくてもかまわないというコンセンサスが得られている」とし、コレラ菌やノロウイルス、らい菌の例をあげ、「疾患と病原体の関係はコッホの4原則だけではなく、疫学的な状況から総合的に判断される」ものであると論じています。 また、次に、実は「ウイルスの分離も、動物への感染実験も、どちらも成功している」と指摘し、「新型コロナウイルス感染症については、コッホの4原則をほぼ満たしている」と論じています。 大橋氏は、一般人にはわかりにくい学術用語を駆使して自説を主張されていますが、そのひとつひとつを現職の医師が検証すると、「大橋教授の主張は誤りが多すぎて専門家のコミュニティでは相手にされない」、「すぐにばれる嘘」であることが明白となります。(…)(以上、日刊IWJ 2020.08.24より)
◆新しいニセ医学「新型コロナ否認主義」 名取宏 2020.06.15 https://blogos.com/article/464662/
(…)病気そのものだけではなく自粛に伴う経済的な困窮のほうが苦しいという人もたくさんいる。とくに若い世代ではそういう傾向があるだろう。そのような人たちにとって「新型コロナは存在しない」というニセ医学は魅力的に感じるかもしれない。恐ろしい病気は存在せず、検査薬や薬やワクチンを売りたい製薬会社の陰謀であって、自粛なんて必要ない、自由に過ごしていいというお墨付きを与えてくれるからだ。大橋眞氏の動画の再生数と好意的なコメントの理由の一端もそのあたりにあるのではないか。
少数派だからと無視していれば気づいたときには取返しがつかなくなりうる。エイズ否認主義の教訓を忘れてはいけない。新型コロナウイルス否認主義は、ウイルスの流行を広め、近い将来には有効な薬やワクチンへの反対論をもたらすであろう。また、新型コロナウイルス感染症は、若い世代では重症化しにくいとは言え、重症化しないわけではない。ニセ医学を信じた個人においても不利益をもたらす。(…)
◆波津研究室: 日本メディアが伝えない「新型コロナ患者の現実」
日本人の新型コロナに対する認識は、このところ、すっかり風化してしまい、まるで新型コロナ問題はもう終わったかのような雰囲気さえあります。 自民党政権に近い読売新聞に至っては、最近、毎日新型コロナ以外のニュースを1面トップにおいて、もう新型コロナは終わった、という印象を作り出そうとしています。新型コロナが忘れられれば、安倍政権や小池都政の失政も忘れられる、という計算でしょうか。
しかし、新型コロナ認識の急速な衰えは、「慣れ」や、政府のgo to キャンペーンによる「コロナはもう大丈夫」印象の創出だけでは説明できないと思います。
日本では、新型コロナ患者の現実はほとんど伝えられず、「きょうの感染者は〇〇人」という天気ニュースのような「数字」報道がメインだからです。視聴者は、コロナに感染するとどうなるのか、その具体的イメージが得られないのです。海外では全く違います。患者、死者の現実は生々しく伝えられ、国民はコロナをイメージで認識できます。そもそも、コロナで死んだら、誰が死んだか、連日新聞に載ります。イタリアでは(他の国もたぶん同様でしょう)、全部写真入りで伝えていました。一時、ミラノの新聞は、死亡欄のページが何ページにもなったといわれます。日本では固有名詞が伏せられ、コロナによる死さえも、現実感がありません。
その背景は複雑ですが、一つには、日本に特徴的な「患者が差別される」という異様な現実があります。
その結果、患者自身や家族が、自分たちの現実を報道されたくない、と思うわけです。それが「個人情報」とかいう、勘違いに基づく日本独特の概念で説明されます。この問題点についてここでは詳しく述べませんが、「見られたくない」「現実を見たくない」(一部に、異常に「知りたがる」人々もいますが)という国民自身の意識が、メディア報道のゆがみを生んでいる、という側面があるのです。
そこで、日本メディアが取材可能なのは、外国のコロナ患者の現実、ということになります。
今回紹介するのは、武漢での現実です。[1]は、今年1月新型コロナが発生して、大混乱に陥った中国・武漢で新型コロナと戦う医師と、患者たちをリアルに追ったNHKの番組「BS1スペシャル」。
そして、[2]は、新型コロナ画制圧されたしばらくたった、8月の武漢です。これはテレ朝「モーニングショー」から、1分だけのミニニュース。
武漢の半年前と現在の対比が分かります。
中国は、台湾、韓国、ドイツ、米・ニューヨーク州などと同様、「徹底したPCR検査→感染者の保護・隔離・治療→非感染者の生活正常化」というコロナ対策の王道を行き(というか、そのモデルを作りました)、今ではほとんどの人々が、普通の暮らしを取り戻しています。
日本では、今も、PCRの大規模実施も感染者の保護・隔離も行われないため、「どこに感染者がいるかわからない」状態が永続化しています。
その結果、大学でも、いつ正常な対面授業が復活するか、見通しも立てられません。そんなことも考えつつ見てください。
[1]NHKBS 武漢 ICU医師の闘い
https://www.youtube.com/watch?v=ruydoVLKcsY&feature=youtu.be
[2]感染ゼロ2か月 盛り上がる武漢の夏
https://www.youtube.com/watch?v=IBnuKT9wOkU&feature=youtu.be