書評「英語の帝国」植民地化の言語政策を自ら求めた文科省
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-282.html 寺島隆吉 2017.08
(…)一九六一年にウガンダのマケレレで開かれたブリテン連邦会議で、次のような信条が確認され、イングランド語を「英語の帝国」として拡大していく際の原則、とみなされるようになった…
不幸なことに、旧植民地を大英帝国の属国として維持するためにまとめられた諸原則が、今、日本で小学校から大学にいたるまで大手を振ってまかりとおっている(…)
マケレレ会議の5原則
「英語は英語で教えるのがもっともよい」
「理想的な英語教師は英語を母語とする話者である」
「英語学習は早いにこしたことはない」
「英語に接する時間は長いにこしたことはない」
「英語以外の言語の使用は英語の水準を低下させる」
(…)あまり教育効果が見られないのは、導入時期の問題ではなく、小学校英語というのは、その性格上「ザルみず効果」に終わるしかないからです。(…)日常的に使う場のない日本では、丸暗記を強要された単語や言い回しは、「ザルに水を入れる」のと同じく、脳に溜まっていかないからです。しかも英語を丸暗記するのに浪費された膨大な時間は、小学校における他教科の時間を削減させることにつながり、必然的に、ノーベル賞を生み出した基礎学力、国語力や数学力といった基礎学力を低下させることにつながるでしょう。
また、「英語以外の言語の使用は英語の水準を低下させる」という原則をひとつの口実として大学では第二外国語の学習は必修から外されてしまいました。(…)それに代わって登場したのが文科省の「専門科目や大学院までも英語で教えろ」という政策でした。そして、このような方向で「国際化」をはかる大学に巨額の補助金を出すという、間違った「国際化=アメリカ化」が、いま強力に推進されているのです。他方で、全国の国立大学への交付金は毎年のように削減され、今では非常勤や期限付きの教員が全教員の過半数を占める勢いになってきています。これで、どうして腰を落ち着けて研究や教育に専念できるでしょうか。
(…)このような「英語熱」を煽っている政府・文科省の背後には、更にもっと大きな怪物がいて、その「英語の帝国」が、現在の世界の流れ、すなわち新自由主義的グローバル資本主義をつくりだしているのであれば、そのことをきちんと指摘することこそ…というのは、英語教育を通じてアメリカによる文化工作がおこなわれ、それを政権転覆につなげようとする動きが、いまだに世界の各地で存在するにもかかわらず、日本の大手メディアはそのような動きに全く無自覚・無防備であるように私には見えるからです。(…)
「『英語で授業』のイデオロギー ~英語教育が亡びるとき」
寺島隆吉著 明石書店 2009年
★日本人がノーベル賞をとれるのは英語でなく自国語で深く思考できるからで、日本が基礎科学において強いのも大学まで自国語で学問ができるからで、その結果として、外国語が苦手といわれる日本人がノーベル賞をとれるわけである
★母語はまず無自覚的・無意図的に会話から習得するが、外国語は逆に、まず母語を媒介にして、自覚的・意識的に文字や文法の学習から始めるのが最適であって、「英語で授業」は言語学的、教育学的にいって非能率的なだけでなく弊害さえある
★「読む力」➡「書く力」➡「聞く・話す力」の順が外国語を学ぶのに妥当な順序
★外国語のレベルは母語のレベル以上にはならないので、まず日本語の作文力をつける
★「英語は世界語だ」と信じて英語を必死に勉強している日本人が多いが、アメリカ人の目で世界を見るように仕組まれているために逆に世界が見えない
★日欧米マスメディアがコントロールされているのを見抜くためにも、英語で世界に発信されている他の情報を得るための英語教育がますます重要になっている
★アメリカのような国にしないために英語を学ぶのが英語教育
★英語だけが外国語でないことを教えるのが英語教育
★「英語が使える日本人」を育てるという指導要領の裏には、「内需拡大」「教育の民営化」などの財界・ビジネス界の意図が見え隠れしている
★教育を儲けの道具にすることだけは拒否しなければならない
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すでに幼稚園で「英語で子育て」が始まっています!
➡https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/169500.html
2018年 7月8日 セワヤキ