「日米合同委員会 」 = 「日米軍のトップ」+「日本の高級官僚」
「今を伝える」ということ(成文堂)が2015年12月17日に出版されました。IWJ代表・岩上安身を含む14人のジャーナリストの講演です。その講演で言い切れなかったことを岩上氏がここで言っています➡http://iwj.co.jp/wj/open/archives/279798#idx-7
以下はその一部をセワヤキが編集したものです。「安保条約」&「地位協定」というものが非常に不平等で屈辱的な内容であって、そのために日本の戦後政治が「国民のための政治」になれないでいるのだとあらめて認識しました。
陸山会事件 舞台裏には何が?
この事件では、検察が一生懸命「罪のでっち上げ」をしました。大手メディアも一緒になってメディアスクラムを行い、小沢バッシングを繰り広げました。一社残らず、リベラルメディアも一緒になって、小沢一郎氏を叩いたのです。ウィキリークスがこの舞台裏を明らかにしました。(➡ http://saigaijyouhou.com/blog-entry-147.html )
アメリカのカート・キャンベルという国務次官補がいます。この人が日本にきて小沢一郎さんたちに会いました。そのあと韓国へ行って、キム・ソンファンという大統領の首席秘書官と会いました。その会談内容の公電が暴露されています。日本の民主党政権と自民党政権は全く異なるという認識で一致したという内容です。日本の民主党政権というのは、この場合、小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏のことを指しています。歴代の自民党は素直に言うことを聞いたけれども、民主党政権は言うことを聞きそうもない。アメリカは、辺野古新基地建設、集団的自衛権の行使を望んでいますが、民主党の鳩山政権は違うことを考えていました。アメリカとも中国とも等距離で友好関係を保とうと考えていたのです。(「正三角形」)
そういうことはアメリカとしては認められないわけです。キャンベルは次世代に期待しようと発言し、具体的に菅直人氏、それから岡田克也氏の名前をあげました。・・・前原さんは追い出し側にいたのですが、当時の前原国交大臣がキャンベルに対して、「小沢には気をつけろ」とよけいなことを言っていることまで明らかになっています。
日米合同委員会 = 「日米軍のトップ」+「日本の高級官僚」
陸山会事件の捜査を、検察が猛烈に攻撃的に行ったわけですが、そもそもその裏側にあるものは何でしょうか。
実は、「在日米軍のトップ」と「日本の高級官僚」は、「日米合同委員会」という、日ごろその内容を明らかにしない組織を持っています。占領以来続いている在日米軍の特権である日米地位協定では「米軍は日本の国土全体を自由に使える」となっています。日本政府はこういう非常に不平等で屈辱的な内容の安保条約と地位協定を、そのままにしてきました。
日米合同委員会は、(不平等で屈辱的な内容の安保条約と地位協定に沿って)その統治をするための協議機関です。日米合同委員会のメンバーだった法務官僚は、法務省のトップである事務次官の占める割合が過去17人中12人、そのうち9人が検事総長まで登りつめています。これは大変なことです。検事総長は日本の治安機関のトップです。本来、安保であれば、防衛官僚や外務官僚が務めればいいのに、法務官僚がここに加わっているのです。つまり米軍と日本の高級官僚をメンバーとする共同体が検察権力を事実上、握っているわけです。
鳩山政権は、この日米合同委員会につぶされたということです。普天間飛行場の県外移設を公言したものの、撤回して総理辞任に追い込まれました。鳩山さんは私(岩上氏)のインタビュー(➡ http://iwj.co.jp/wj/open/archives/240251 )で、「日本の官僚は、日本の総理大臣にではなく日米合同委員会に忠誠を尽くしている。そのことを自分は総理になるまで知らなかった」と言っていました。官僚は全然、総理のほうを向いていない、つまりアメリカのほうを向いているということです。
尖閣問題 「日中間で棚上げと決めた」(サッチャー首相と鈴木善幸首相間の尖閣対話)
・・・「中国がとんでもないことをしている、危険で仕方がない、だから集団的自衛権を行使できるようにしなくてはならない」と考える人が少なくありません。
2010年に尖閣諸島で中国漁船の衝突事件がありましたね。・・・そして2012年4月16日、石原慎太郎さんが尖閣諸島を東京都で買い取ると表明します。この発言が大変大きく報道され、問題が一挙に緊迫化するのです。
尖閣諸島は、日本が領土であることを主張し、台湾も主張し、中国も主張しています。・・・しかし問題は、誰が実効支配しているのかということです。
例えば北方領土は、日本も主権を主張しているけれども、実効支配はずっとロシアがしています。外国が実効支配している限り、そう簡単に取り返せるものではありません。では竹島はどうか。日本も主権を主張していますが、実効支配は韓国がしています。・・・実効支配している側は、「あなたの言い分もわかるけれども、現在我々が実効支配しているのだから、この問題は棚上げにしておきませんか」と言うのが一番いいわけです。・・・実効支配している側がそういう態度を取るのです。
ところが尖閣問題では、実効支配している日本が、わざわざ中国を挑発するようなことをしました。しかも、石原都知事が、尖閣買い取りを発表した舞台が米国のヘリテージ財団だった(「クリングナー論文」http://iwj.co.jp/wj/open/archives/118349 )ということは、ほとんど意識されませんでした。
・・・もともと尖閣問題は、日中間で棚上げと決めていたのです。「これは先送りしよう。お互いの言い分が対立してしまうから」と。ところが読売新聞が、2013年4月26日付の社説で、「尖閣は日本固有の領土であり、領土問題は存在しないし、日本政府の立場を堅持することが肝要」と、棚上げ論を否定したのです。・・・そもそも読売は、1979年5月31日付の社説で「尖閣の領有権問題は、72年の日中国交正常化の時も昨夏の日中平和友好条約調印式の際も問題になったけれども、触れないでおこうという方式で処理されてきた」と棚上げを認めていたのです。
・・・「棚上げ」の有無の論争についてはもう決着がついているのです。1982年、鈴木善幸首相が、来日したサッチャー首相との首脳会談で、中国との話題を取り上げました。その時に「実質的に棚上げをしています」という主旨の説明をしています。これは、両者のやり取りを記録した英文の文書が公文書館から2014年12月30日付で機密解除になって、明らかになりました。(➡サッチャー首相と鈴木善幸首相との間で交わされていた「尖閣対話」の内容http://chikyuza.net/archives/49765 )
「鈴木善幸首相が尖閣問題について鄧小平と会談した時に、両国政府は大きな共通利益に基づいて協力し、細部の違いは脇に置くべきだという結論に達したと説明、具体的に問題とされることなしに実質的に棚上げされたと語った」と、こういう形できちんと記録が出ているのです。嘘やごまかしは必ず発覚します。
中国軍が攻めてきたら、アメリカの海兵隊は出動するのか?
・・・尖閣問題については、私(岩上氏)は2010年5月11日に、岡田外相にストレートに質問しました(➡外務大臣会見記録2010年5月11日「日本の安全保障政策」【フリーランス 岩上氏】http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_1005.html#2-E )
「中国軍が攻めてきたら、アメリカの海兵隊は出動するのですか。政府は『抑止力、抑止力』と言っているけれども、どうなのですか」と。岡田さんははっきりと「一義的に日本を守るのは、当然、日本の自衛隊です。日本を守ることで米軍に依存するということはありません」と言い切りました。これは、日本政府の防衛外交安全保障に関わるトップの人間が「防衛は一義的に日本の自衛隊が行う」、つまりアメリカは実際の戦闘には出てこないということを明言した初めての記録です。
・・・「日本の自衛隊が一義的に防衛にあたる」つまり、米軍は手を出さずに日本の自衛隊が戦う、ということならば、これは当然、個別的自衛権の範囲ではないですか。ミサイル防衛から、ゲリラ戦から、何から何まで日本が担うなら、すべて個別的自衛権でいいではないですか。何のための集団的自衛権行使なのかという問題がわき上がってくるわけです。
(以上http://iwj.co.jp/wj/open/archives/279798#idx-7 参考)
2016年 1月9日 セワヤキ http://www.sewayaki.de/