パルスオキシメーターでCOVID-19感染の重症化を予測?!
新型コロナ患者の軽症者が急に重症化するのはなぜか――その謎に迫る!
以下、日刊IWJガイド2020.4.27 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/40060より
◆私もあなたもコロナに感染するかもしれない、あるいはすでに感染しているかもしれないからこそ、必ず知っておくべきこと! 「知らないうちに進行する『低酸素症』」が新型コロナウイルスの恐ろしさ!? ニューヨークの病院で新型コロナウイルス感染者を診療した医師、リチャード・レヴィタン氏が警告!! レヴィタン氏は30年間緊急医療に携わる医師。呼吸を助けるための管の挿入方法を指導するプロセスを考案し、世界各地の医師に向けて気管処置の講座を行っているといいます。
※The Infection That’s Silently Killing Coronavirus Patients This is what I learned during 10 days of treating Covid pneumonia at Bellevue Hospital.(THE NEW YORK TIMES、2020.4.20)
原文https://www.nytimes.com/2020/04/20/opinion/coronavirus-testing-pneumonia.html
日本語訳: 東洋経済オンライン2020.4.24 https://toyokeizai.net/articles/-/346423
レヴィタン医師のレポートとIWJの解説
「通常、救急治療室(ER)に運ばれる患者は、心臓麻痺や脳卒中といった重篤な状態から、軽度の裂傷、中毒症状、整形外科系のケガ、偏頭痛といった軽症までさまざまだ。 ところが、ベルビュー病院で10日間ボランティアをした期間中、ERの患者はほとんどすべて新型コロナによる肺炎患者だったのだ。(中略)次の事実が私たちを心底驚かせた。こうした患者たちの胸のレントゲンは、肺炎が進んでいることを示しており、飽和酸素レベルも正常以下であるにもかかわらず、ほとんどが呼吸上の問題を訴えていなかったのだ。」
レヴィタン医師は、肺炎が進行しているにもかかわらず。息苦しさを訴えていない患者たちの様子に驚き、その理由を探り始めます。新型コロナに感染して、肺炎となっても、患者は息切れしたり、息苦しさをなかなか感じることがない。ここがキーポイントです。レヴィタン医師は、通常の肺炎と、新型コロナ肺炎の違いをこう説明します。
「肺炎では患者は通常、胸部の不快感や呼吸時の痛みなどの呼吸障害を発症する。しかし、新型コロナ肺炎の場合、当初患者は酸素量が低下しても、息切れを感じない。しかしその間、驚くほど酸素濃度が低下し、中等度から重度の肺炎(胸部X線写真でみられる)になっていく」(正常な酸素飽和度は94%から100%だが、レヴィタン医師が診察した患者の中には、50%にまで低下していた者もいた)
「驚いたことに、私が見た患者のほとんどは、1週間ほど前から発熱、咳、胃もたれ、倦怠感などの症状が出ていたが、来院するまで息切れなどは感じていなかった。(中略)私が診た新型コロナ肺炎患者の大多数は、(中略)挿管の準備をする時でさえスマホをいじっていた。呼吸は速いし、胸部レントゲンでは危険なほど酸素濃度が低く、ひどい肺炎であったにもかかわらず、見た目には比較的最小限の苦痛を抱えているだけだったのだ」
レヴィタン医師は、新型コロナ肺炎が、「サイレント(無症候性)低酸素症」という酸素欠乏を引き起こすという説を立てます。
通常の肺炎にかかった患者は、胸部の不快感や痛みを感じるものですが、新型コロナウイルスの患者はこうした症状を感じず、その間に肺の酸素濃度が低下して重い肺炎になっていき、突然、呼吸不全となって重体になる、というのです。こうした「知らないうちに進行する『低酸素症』」が新型コロナウイルスの特徴であり、恐ろしさであると言えるでしょう。
現在、日本の現状では、熱があってもPCR検査を受けさせてもらえず、受けることができて陽性と判明しても、軽症者は自宅待機を命じられて治療が受けられない状態にあります。しかし、実際に患者が息苦しさを感じ始めた時には、新型コロナ肺炎はかなり重症化してしまっている、ということを、このレヴィタン医師のレポートは説得力をもって私たちに伝えてくれます。自宅待機を求める厚労省や保健所や医療機関の「おふれ書き」を読むと、「息苦しさを覚えたら連絡ください」などと書かれていますが、息苦しさを覚えた段階では、手遅れに近いのです。
「なぜそうなるのか、私たちはようやく理解し始めたばかりだ」と書きつつ、レヴィタン医師は、その謎に迫ります。
「コロナウイルスは界面活性剤物質(サーファクタント)を産生する肺細胞を攻撃する。この物質のおかげで、肺の中の肺胞は呼吸の合間に膨らんだ状態を維持できる。(中略)新型コロナ肺炎の炎症が起こり始めると、肺胞が虚脱し、酸素レベルが低下する。それでも当初は、肺はこの状態に適応し、硬くなることも、液体を貯めることもない。この状態であれば、患者は二酸化炭素を排出できる。二酸化炭素が蓄積されなければ、患者は息切れを感じない」
しかし、血中の酸素が低下するにつれ、その生理的反応として、患者は無自覚により速く、深く呼吸をするようになり、その激しい呼吸によって肺は傷つけられます。それにともなって、炎症はさらに進行して、肺胞の虚脱が進み、ついに酸素レベルが急低下するまでに悪化してしまう、とレヴィタン医師は言います。患者の二割はより危険性の高い肺損傷段階へ進み、液体がたまり、肺が硬くなり、二酸化炭素レベルが上昇。患者は急性呼吸不全を発症する、というのです。
「目立って呼吸がきつくなり、危険なほどの低酸素レベルで病院にやってきたときにはもう、最終的に人工呼吸器が必要となることが多い。 息切れを感じることなく突然死亡する新型コロナ患者の症例は、無症候性低酸素症が急速に呼吸不全に進展する事態で説明できる」
こうしたことから、レヴィタン医師は無症状の低酸素症を早期に発見することが重要だと指摘しています。そのために、一般に普及しており、酸素飽和度や脈拍数を計測できる「パルスオキシメーター」で早期を発見し治療を受けることが有効であるとしています。パルスオキシメーターは機械に指を入れるだけで計測ができます。日本では4000円程度から購入できます。